2010年07月13日

帰ってきた男6 修正版


 朝早く、ヤムチャとプーアルは出て行った。
 トランクスは別れという意識をまだ持っていないのでただ笑顔を二人に見せ、ブルマは複雑な表情で見送った。ヤムチャはそんなブルマにただやさしく微笑んだだけだった。
「また来いよな」
 ウーロンがめずらしく名残惜しそうにそう言って見送った。


「ちっ」
 ベジータは腕を胸の前で組んで忌々しげに舌打ちをした。
 惑星の消滅の際の爆発に巻き込まれ、宇宙船の一部の機能が故障していた。それは軌道を設定する部分で地球に戻るのであれば必要な機能だった。
 ベジータは昨日から宇宙船に備え付けている通信機らしきものを見ていた。
 これで地球のブルマと通信して、修理の仕方を聞けば直せるはずだった。しかし、ベジータのプライドが邪魔をして、その行為をできないでいた。
 最後に確認した宇宙船の位置は地球がある銀河系より離れていた。爆発でまた遠くに飛ばされた可能性もあり、一刻も早く修理をして軌道を定めたほうがよかった。



「トランクス、あーん」
 ブルマは離乳食を小さいスプーンに取り、トランクスの口に運んだ。トランクスはおいしそうにもぐもぐと口を動かして食べていた。母乳は寝る前にあげるだけ、あとは離乳食を与えていた。
 さすがにサイヤ人の子供らしく、離乳食の量も半端じゃなかった。
「ほんとう、すごく食べるわねぇ。」
 ブルマの言葉にトランクスは嬉しそうに笑った。
「サイヤ人とはいえども赤ちゃんはおなか壊さないのかしら?」
 ブルマはそう呟きながらも、ご飯を欲しがる息子に離乳食を与え続けた。

(俺らしくもない)
 ベジータは鼻を鳴らすと通信機を手に取った。するとボタンを押すまでもなく、通信音が聞こえてきた。
「べ、ベジータ?!」
 間もなくブルマの嬉しそうな声がすぐに耳元で聞こえた。
「どうしたの?元気?」
 その声には涙声が交じっていた。ベジータは舌打ちをした後、口を開いた。
「宇宙船の軌道を定める機能が故障した。直せるか?」
「そうなんだ。ちょっと待っててね」
 がっかりした声が聞こえ、そのあとパソコンのキーボードを打つ音がした。
「えっと、今の位置は‥…。ええ?!そんな遠くにいるの?」
 ブルマの言葉にベジータは目を見開いた。
(この女、俺のいる場所がわかるのか?!)
「ブルマ、どうして宇宙船の場所が特定できるんだ!?」
 ベジータは声を荒げて尋ねた。
「だって心配だったから、こっちから遠隔操作できるようにプログラムして置いたの」
 ブルマはベジータの問いにさらりと返事を返した。その答えにベジータは怒りで拳を握りしめている。
「怒んないでよ。こっちから一度も操作してないでしょ。私だって、あんたが帰る気がないなら、地球に帰るように操作するつもりはないわ。」
ブルマは静かな声でそう言った。
「どうするの?地球に向かって軌道修正してほしいの?そのために連絡くれたんでしょ」
 ブルマは何も期待してない声で言葉を続ける。
 ベジータは鼻を鳴らして、口を開いた。
「地球には人造人間とやらが来る前日に戻る。軌道修正だけでいい。スピードなどは俺が自分で調整する」
「わかったわ」
 ブルマはそう答えて、キーボートを打ち始めた。
「来月も送ってくるのか?」
「な、なに?」
 突然の質問にブルマは戸惑った。
「あの報告で時間を計算してるから、忘れるなよ」
 ベジータそう言って、通信を切った。
「べ、ベジータ?!」
(まったく、まだ軌道修正が終わってないのに)
 ブルマはため息と付きながらもうれしかった。
(あいつ、ちゃんと毎月見てるんだわ)
 ブルマは軌道修正を終えるとトランクスのいる部屋に走りだした。
 その顔には、はち切れんばかりの笑顔が浮かんでいた。





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posted by ありま at 12:44| DB 2次小説 人造人間編前 前夜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

帰ってきた男 作者のつぶやきB

やっと5を更新しました。
ありま氷炎です。

実はプロットは終わりまでできてるのですが
時間がなく更新ができませんでした。

一応あと3話で終わる予定です。

ヤムチャが完全にパラレルワールドですね。
原作とアニメからかけ離れすぎかもしれません。(汗)

まあ、2次小説ってそういうものですよね。

ははは。。

次回更新は明日がんばるつもりですが、
時間が読めないので明後日になったらすみません。

それではいつもお立ち寄りくださる方々、
感謝しております。

ありがとうございます。

ありま氷炎 拝
posted by ありま at 12:29| Comment(0) | DB 2次小説 人造人間編前 前夜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

帰ってきた男5 修正版

 ヤムチャはブルマと話をした後寝つくことができず、すでに寝ているプーアルを部屋に残して久しぶりにバーに来ていた。

「ヤムチャさん、お久しぶりです」
 ヤムチャがカウンターで一人で飲んでいると黒髪の色香の漂う美女が声をかけてきた。それは2年半ほど前に別れたきりのディナーだった。
「ディナー……か。誰かと思ったよ」
 ヤムチャはディナーの変化に驚きを隠せなかった。
 少女の面影は少しもなく、円熟した大人の香りがする美女に変わっていた。
(わずか2年ちょっとでこんなに変わるものなのか。女という生き物は怖いものだ)
 ディナーはヤムチャの驚きの視線を艶美な笑みで返しながら隣の席に座る。そしてヤムチャが飲んでるものと同じものを注文した。
「どうしたんですか?浮かない顔をして」
 ディナーは飲み物を右手に、首をかしげてヤムチャを見た。
 それは計算された動作のように、ヤムチャの視線をくぎ付けにした。
 上目づかいの目に誘うような唇……
 普通の男ならそのまま抱きしめてしまいそうなほど魅力的だった。しかし、ヤムチャはディナーから視線をそらして、飲み物を口に含んだだけだった。
「やっぱりヤムチャさんはほかの人とは違いますね。」
 ディナーはそう言って微笑んだ。
「同じさ、ただ今日はそんな気分じゃない」
 ヤムチャはディナーの言葉にそう返して、再び飲み物を口に含む。
「振られたんですか?」
 ディナーは気遣うようにやさしい笑み口元に浮かべてそう尋ねた。
「まあ、そういうことになるのかな。初めから振られていたようなものだけど」
 ヤムチャは苦笑して答え、空になったグラスをカウンターの上に置いた。
「ヤムチャさんを振るなんて、信じられない。私なら絶対に振ったりしないのに」
 ディナーはすこし怒ったようにそう言い、真摯な黒い瞳をヤムチャに向けた。その瞳には依然と変わらない輝きがあった。
「私は今でもヤムチャさんのことを好きなんです。私じゃ、代わりになれませんか?」
 ディナーはヤムチャの瞳を覗き込むように見つめてそう言った。その瞳の中にヤムチャは自分の姿を見たような気がした。
 ブルマを真摯に思う、叶わぬ思いを抱く自分の姿。
 ヤムチャはふいに胸が苦しくなり、ディナーから視線をそらした。
「私、ヤムチャさんの気持ちはすべてわかってるつもりです。それでもいいから、一緒にいてくれませんか?」
 ディナーはそう言いながらヤムチャの手に自分の手を重ねる。
 ディナーの手の冷たさがヤムチャに伝わる。
 心地いい、冷やりとした感触。
 ヤムチャはその思いに溺れそうになる。しかし、ヤムチャはその手をそっとディナーの膝に戻した。
「ごめん。俺は自分の慰めのために、女の子を不幸にしたくない。俺は彼女を忘れることができないんだ」
「わかってます。私がそうだから」
 ディナーはうつむいてそう呟いた。昔のようなその儚い姿に、ヤムチャはディナーをそっと抱きしめた。
「本当にごめん。俺は君の思いに答えられない」
 ヤムチャはかすれた声でそう言った。ディナーはその言葉を聞くと、はらはらとヤムチャの腕の中で泣き始めた。
「ごめんなさい。私もわかってます」
 ディナーは押し殺した声でそう言ったが涙を止めることができなかった。
 ヤムチャはそんなディナーをやさしく腕の中に抱いていた。心の中でヤムチャも泣いていたかもしれない。
(俺たちはどうしてこんなに苦しんだろう。誰か別の人を好きになれたら楽なのに)


 それから1時間後、ヤムチャがカプセルコーポレーションに戻ると研究室のほうでブルマの気を感じた。
 普段はブルマの気は微量すぎて感じることができないのだが、何かに集中してるのだろう。気を感じることができた。
 ヤムチャは研究室に入り、壁を軽くノックした。
「ヤ、ヤムチャ」
 驚いた顔でブルマが振り向く。手にはベジータ用の戦闘服が握られている。
「戦闘服を作ってるのか?」
「う、うん。トランクスが起きてるとなかなか作業もできないしね。ヤムチャはそんなおしゃれな格好して、バーでも行ってきたの?香水ついてるわよ」
 ブルマは子供のように笑ってそう言い、ウインクをした。
「まあ、な。ディナーに会ったんだ」
 ヤムチャの言葉にブルマの顔が少し曇った。
 別れたとはいえども、少しは気になるようだ。
 ブルマのそんな様子にヤムチャはおかしくなって口元が緩んだ。
「何、笑ってるのよ」
 ブルマがむっとしてヤムチャを見る。
「何でもない。昔の男のことでも気になるんだな」
「ふん。悪かったわね。でも、いい彼女がいてよかったわ」
 ブルマは怒ったような表情を微笑みに変えてそう言った。
「実は心配してたの。私のせいでヤムチャが一生結婚できないかと思って」
「結婚はしないよ。俺は一生ブルマ一筋だから」
 ヤムチャはブルマをその黒い瞳で射抜くように見つめた。ブルマはおびえたような表情を見せる。
「大丈夫だって。俺はブルマを困らせるようなことはしない」
 ヤムチャはブルマを安心させるように笑った。
「俺は明日出ていくよ。でも当日プーアルを預けにくるけど。いいか?」
「も、もちろんOKよ」
 ブルマはヤムチャの突然の言葉にびっくりして、一瞬返事が遅れた。ヤムチャは切なげにブルマを見た後、その髪にやさしく触れた。
「またな」
 そうしてヤムチャはブルマに背を向けると研究室を出て行った。
(俺は一生忘れられない。多分死ぬまでブルマを好きだろうな)


posted by ありま at 12:00| DB 2次小説 人造人間編前 前夜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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