2010年07月23日

「迷い10」カエルトコロ8.5 番外編

目が覚めると見慣れた天井が見えた。クリーム色のやわらないカーブをもつ天井。

「ホーロイ……」
 シェリンプのベッドにホーロイが顔を伏して寝ていた。
 深い寝息が聞こえる。
 シェリンプはホーロイに触れたかったが、擬態するのが怖かった。通常相手の目を見ないと擬態しないはずだが、ベジータのケースのように近くにいるだけで相手の思いを受けて擬態する場合があるからだ。
 シェリンプはベッドから立ち上がり、窓から外をみた。
 4か月間しかこの家にはいなかったのだが、いつしかこの家はシェリンプにとってかけがえのない家になっていた。
(でもこの家にはいられない。母星に帰るんだ)

「!」
 ふと大きな腕に包まれた。
 体をかぎ慣れた香りが包む。
(ホーロイ……)
 涙が出そうになったが、シェリンプはホーロイの腕から逃れた。
「僕に触らないで」
 シェリンプが泣きそうな声でそう言ったのだが、ホーロイは乱暴にシェリンプを抱きしめた。
「もうどこにも行かせない。私のそばにいてくれ」
 ホーロイはシェリンプを抱く腕に力を込めた。
「苦しい。離して」
 シェリンプが息切れ切れにそう言うとホーロイは腕の力を弱めた。
「僕はもう擬態する気はなんかない。それでも一緒にいたいの?」
 シェリンプの言葉にホーロイはやさしく笑った。
「シェリンプ。私の目をみてごらん」
 ホーロイはそう言って、シェリンプの頬に手を当て、自分に向けた。シェリンプの視線とホーロイの視線が重なる。しかし、シェリンプの姿は変わらなかった。
「体力が落ちてるんだ」
「違うよ。私の気持ちが変わったんだ。私にとって一番大切なのは君だ。シェリンプ」
 ホーロイはそう言ってシェリンプの唇に口づけた。
 シェリンプの大きな瞳から涙がこぼれる。
「擬態なんか、もう必要ない。ずっと一緒にいてくれ」
 ホーロイの言葉にシェリンプはただうなずいた。




posted by ありま at 16:10| DB 2次小説 人造人間編前A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「迷い9」カエルトコロ8.5 番外編

「おい!貴様の連れだ。」
 ベジータそう言って、ホーロイにシェリンプを投げ渡した。
「すごい熱だ。どうしてこんなことに」
 ホーロイは責めるような視線をベジータに向けた後、慌ててシェリンプをベッドに連れていった。そしてあわただしく、薬や冷水を用意し始めた。
 ベジータはそんなホーロイを冷たく見て、口を開いた。
「明日には動けるようにしておけ」
 その言葉にホーロイは怒りを露わにしてベジータを見たが、ベジータは鼻を鳴らし、家を後にした。
(いつ見ても、奴の顔は胸糞悪い)
 ヤムチャと同じ顔で睨まれて、ベジータはいらだっていた。
(ガキが回復したらいっそ殺してやろうか……)
 そんな思いが頭をよぎったが馬鹿らしくなり、考えるのをやめた。

 ぽちゃん。
 ベジータは滝壺にきていた。暗闇の中で水は冷たく、ベジータの肌を刺激した。
 いつものように滝壺深く潜り、眼を閉じる。
 音のしない空間、頭の中が無になる。

「ベジータ……」
 ふいにブルマの声が脳裏に響き、ベジータは眼を開いた。
(くそっ)
 そして水面に上がる。
(やはりブルマの家などにいくべきじゃなかった)
 ベジータは乱暴に戦闘服を装着すると森の中へ食糧と寝床を探すべく入っていった。


 ベッドの上のシェリンプの寝息は荒かった。
 吐かれる息が熱い。

(こんなことになるのであれば無理やり引きとめればよかった。あのベジータという男、シェリンプを利用することしか考えてない)
 ホーロイは怒りで拳を握りしめた。
「シェリンプ、どうか生きてくれ。君が宇宙に帰ってもいいから。もう一度私に元気な姿をみせてくれ。」
 ホーロイは血を吐くような声でそう言って、シェリンプの手を握った。握りしめた手は火のように熱かった。
(熱さましの薬は飲ませた。あとはシェリンプの体力次第だ)
 ホーロイは祈るようにシェリンプの手をもう一つの手で包んだ。


posted by ありま at 13:00| DB 2次小説 人造人間編前A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「迷い8」 カエルトコロ8.5 番外編

 一人残されたホーロイは茫然と宇宙船の近くでたたずんでいた。
(シェリンプは自分を最後まで見ようともせず、宇宙に帰る気に違いない。自業自得だ)

 ホーロイは力なくその場に座りこんだ。

 (シェリンプの体力の消耗が激しいのに、妻の擬態を続けることを願った私。私は彼女の気持ちに気づいていた。それを利用して擬態をつづけさせた)

 正直ホーロイは妻が好きなのか、シェリンプ自身が好きなのか分からなくなっていた。

(ただ離れなくない。愛する人とまた離れるのがつらかった。擬態なんかもう必要がない。私はただシェリンプが一緒にそばにいてくれるだけでいい。擬態が解けたシェリンプを見て、私はショックを隠しきれなかった。でもそれはシェリンプの姿ではなく、シェリンプの姿でキスをしたいと願った私に対してだった。
 多分、シェリンプが妻の姿に擬態できなくなってきたのは体力の消耗よりも私の思いの変化だろう。もっと早く自分の気持ちに気づければシェリンプを傷つけることがなかったのに。
 時すでに遅しか…)

 ホーロイは二人が消えた夜空を見上げ、ため息をつくと立ち上がりと家に帰っていった。


 その30分後、べジータ達が宇宙船のある山に帰り着いた。シェリンプはホーロイの姿が見当たらないことに
なぜか安堵ではなく、悲しみを感じた。
「さて、始めてもらおうか」
 べジータは腕を胸の前で組みそう言った。周りは闇に囲まれて一寸先も見えない状態だ。
(こんな暗いところでどうやって作業をしろっていうんだろう)
 シェリンプの不可解な視線をべジータは鼻を鳴らし受け止めた。
「俺が小型の月を作ってやろう」
 そう言って手の平を上にむけ、気を集中させた。数秒後、小型な光のボールが浮かび上がる。
「パワーボールだ。これがあれば作業できるだろう」
 シェリンプはしずかにうなずき、持ってきた袋を開け、部品をとり始めた。しかしその顔色は青白く、今にも倒れそうだった。
 べジータはシェリンプの体調が悪いことに気づいていたが、どうでもよかった。
(宇宙船さえ修理できれば、ガキがどうなろうと構わない。一刻も早くこの地球を離れたい。先ほど触れたブルマの柔らかな髪の感触が手にまだ残ってる。あのままあそこにいたら俺は……)
 べジータは息を吐き、広げた手の平を力をこめて閉じた。

ガシャン!

 金属が落ちる音がした。宇宙船の方を見るとシェリンプが倒れていた。
(くそ、倒れやがったか)
 べジータは舌打ちをした後、シェリンプの元へ歩いていった。シェリンプは定まらない視線をべジータに向けた。するとシェリンプの姿がブルマの姿になる。プラウ星人は本能で身に危険が迫ってるとき、その身近にいるものにとって大切なものに擬態するようにできてるらしい。
 べジータは再び舌打ちをして、ブルマの姿をしたシェリンプを抱き起こした。
「ごめんなさい。僕……」
 シェリンプはそう言って、意識を失った。
 擬態もブルマの姿からシェリンプの姿に解かれる。
 シェリンプの体は火がついたように熱かった。
(このまま放置したら死ぬかもな。宇宙船完成のためにはまだこいつは必要だ。仕方ないか)
 べジータはシェリンプの体を担ぐとホーロイの家へに向かって飛んだ。





posted by ありま at 09:00| DB 2次小説 人造人間編前A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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