2010年07月26日

「迷い14」カエルトコロ8.5 番外編

 ベジータが宇宙船の場所に戻るとすでにホーロイの姿はなく、シェリンプが一人で宇宙船のコックピットを開けて作業していた。
「どうだ、終わりそうか?」
 ベジータはシェリンプの視線に気をつけながら尋ねた。
「あと30分くらいでどうにかなりそうです」
 少し汗をかきながらシェリンプは答えた。
(でも完成したら、この人はブルマさんを置いて宇宙に行ってしまうんだ)
 シェリンプはほんの数分しか会話していないのにブルマのことが気になっていた。
(あんなに強い思いを持った人に僕は会ったことがない。ベジータさんもブルマさんを好きなはずなのに)
「ベジータさん」
 シェリンプはベジータの名前を呼んだ。しかし、ベジータはあさっての方向をみたままだ。
(聞こえてるはずなのに)
「ベジータさん!」
 すこし大きな声で呼ぶと、ベジータが苛立ちまぎれに視線をこっちに向けた。
「!」
 するとシェリンプの視線とベジータの視線が重なり、シェリンプの擬態が始まった。
「ちっ、うるさいガキだ。早く擬態を解け」
 ベジータはそう怒鳴りつけてブルマ姿のシェリンプを睨みつけた。シェリンプはひるみながらも、擬態を解かず、ブルマの姿で口を開いた。
「何かしてくれるなら本当のべジータがいいの。いつになるかわからないけど」
「?」
 ブルマと同じ口調、声でシェリンプはそう言った。
 ベジータは本当のブルマが目の前にいるような錯覚に陥る。
「僕がベジータさんに擬態して、何かして欲しいことがあるかと聞いた時、ブルマさんはそう言ってましたよ。こんなに思われてるのにどうしてベジータさんは宇宙に行くんですか?」
「貴様、ブルマに会ったのか?」
 ベジータは鋭い眼でシェリンプを見た。しかしシェリンプは言葉を続けた。
「ベジータさんもブルマさんのことを好きなんですよね?だったらどうして?!」
 シェリンプはそれ以上言葉を告げなかった。ベジータが片手でシェリンプの首を絞めていた。
「黙れ。それ以上、くだらんことを言ったら殺す」
 ベジータはそう言い終わると、シェリンプの首から手を離した。
「ごほっ、ごほっ」
 首の圧迫がとれ、一気に新鮮な空気が入ってくる。
 シェリンプはまだ圧迫された痛みが残る首をさすりながらベジータを見上げた。
(この人は僕を本当に殺す気だった……。でもブルマさんの姿をした僕を殺せなかったんだ)
「すぐに作業に取り掛かれ。あと30分で俺は宇宙に行く。間に合わなければ今度こそ殺す」
 ベジータはそう言って、近くの岩場に腰を下ろした。
(殺せばよかったのか)
 そうすれば自分の中の不可解な感情も消えたに違いない。
(くそっ、できなかった)




posted by ありま at 16:00| DB 2次小説 人造人間編前A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「迷い13」 カエルトコロ8.5 番外編

 建物から出てきたシェリンプを見るとべジータは無言で降りてきて、研究室を一瞥するとシェリンプを抱えて飛び立った。
(遅いと怒鳴られるかと思った……)
 べジータにまた恐ろしいことを言われるかと思ったが、何も言わないことにシェリンプはほっとしていた。
(ブルマさんもなんでこんな怖い人を好きなんだろう)
 べジータの顔を見たが、あいかわらず不機嫌そうな顔で前をみているだけだった。

「着いたぞ、早く作業を始めろ」
 べジータはそう言って、シェリンプを降ろすと少し離れたところに腰を下ろした。

「シェリンプ。昼食を持ってきたよ」
 1時間後、食料を入れたバスケットを持って、ホーロイが現れた。
「ホーロイ、ありがとう。ちょうどおなかすいていたんだ」
 シェリンプは嬉しそうにバスケットに手を伸ばした。べジータはそれをみて舌打ちをした。
「べジータさんも一緒にどうですか?」
 シェリンプがべジータの視線を見ないようにそう尋ねた。
「フン。30分だけ昼食の時間をくれてやる。30分後には作業再開しろ。わかったな」
 べジータは鼻を鳴らしそれだけ言うと、山の中に入っていった。
「おいしいのに……」
 シェリンプはべジータの後ろ姿を見てそうつぶやいた。

 べジータはいらついていた。
 カプセルコーポレーションの上空で待っている間、ふいにブルマの部屋の窓に目がいってしまった。そしてブルマの姿を見た。
 下着に近い格好をしており、その豊満な体が色香を醸し出していた。
 べジータはその姿に一瞬でも心を奪われたことに苛立っていた。
(下らん)
 べジータは戦闘服を脱ぎ捨てると滝壺に飛び込んだ。
posted by ありま at 13:30| DB 2次小説 人造人間編前A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月25日

「迷い12」カエルトコロ8.5 番外編

(べジータさんも無茶なこと言うなあ……)
 シェリンプは恐る恐るカプセルコーポレーションの1階研究室を目指して建物を内を歩いていた。

 1時間前…
 シェリンプが宇宙船の修理をしているとふと、部品が足りないことに気がついた。昨日袋に詰め込む際に、落としたらしい。小さいものだが必要なパーツだった。
 べジータはしぶしぶブルマの家の研究室に再度戻ることを承諾したが、自分が上空で待ってるから10分以内でシェリンプに部品を取って建物から出てくるように命じたのだ。
 しかもその際にシェリンプに誰にも会わないようにと、きつく口止めしたのだ。
(誰にも会わないなんて無理だと思うけど……)
 シェリンプはため息をついて、しのび足で研究室へ急いだ。

 上空ではいらいらした表情のべジータが胸の前で腕を組んで待っていた。

(あった!)
 シェリンプはそろりと研究室のスライドドアを開けて中に入った。
 幸運なことに誰もいないようだ。
 シェリンプは喜び勇んで昨日見ていた宇宙船の箱に近づく。箱の中は昨日みたときより、ごちゃごちゃしていた。
(あの人が何かまた入れたみたいだ)
 シェリンプは箱を机の上に置くと丹念に中を調べ始めた。そして数分後目的のものをみつけ、ポケットに入れる。

「誰!」
 その直後、女性の声がして、研究室の明かりがついた。シェリンプは反射的にその女性を見た。するとシェリンプの擬態が始まった。

「べジータ……」
 女性が泣きそうな声でそうつぶやいた。
(そうか、僕、べジータさんに擬態しちゃったんだ。まずい!)
 シェリンプは慌てて、擬態を解いた。
「あ、あれ??」
 ふいにべジータの姿が消え、赤い髪の耳の長い子供の姿が現れたのでブルマは間抜けな声を出した。
「幻覚かしら……私もそうとうおかしくなってるわね。」
 ブルマは一人ごとをつぶやきながらシェリンプに近づいた。
「君は父さんがどこかで拾ってきた迷子かしら?」
 ブルマがシェリンプに笑顔を向けて、そう言った。
「耳が長いから地球人ではなさそうね。でもウーロンみたいなものをいるし、宇宙人とは断定できないわね」
 シェリンプが黙ってるとブルマは一人でそう話を続けた。
「ま、かわいいから。悪いことするようには見えないし。なんでもいいわ。君、名前なんていうの?」
 まったく警戒心なしで、ブルマはシェリンプにそうたずねた。シェリンプは驚きながらブルマの視線に気をつけて口を開いた。
「僕の名前はシェリンプです」
「ふーん、シェリンプ君ね。私はブルマよ。知ってると思うけど。よろしくね。とりあえず研究室は一応トップシークレットだから今度から入ってこないようにしてね。後は適当に入っていいから」
 ブルマはやんわりとそういってシェリンプの頭をなでた。
(この人、顔は笑ってるけど、心で泣いている)
 さっきからブルマは笑顔を浮かべてシェリンプに話しかけてるが、シェリンプにはその笑顔が作り物だということに気がついていた。
(さっき、僕はべジータさんに擬態していた。この人はべジータさんのことが好きなんだ。あとべジータさんもきっとこの人のことが……。待ってる人がいるのになんでべジータさんはこの人のもとへ戻らないんだろう)
「シェリンプ君。大丈夫?おなかでもすいてるの?」
 ブルマはうつむいて何も言わないシェリンプにそうたずねた。
 ふいに覗き込まれ、シェリンプはブルマのその青い瞳の見つめてしまった。

 擬態がはじまる。

「べ、べじータ?!」
 ブルマはわけがわからず、目を見開いてべジータの姿のシェリンプを見た。
「ブルマさん。僕は見つめられた人の好きな人に擬態する能力があるんです」
 シェリンプはそう言って擬態を解いた。
「不思議な能力ね」
 ブルマの声は落ち着いたものだった。しかしその表情は今にでも泣きそうなものだった。
「ねぇ、もう一度べジータの姿になれる?」
 シェリンプはうなずいてブルマを見つめた。
「すごいわね」
 べジータの姿になったシェリンプをブルマはまじまじと見てそう言った。
「この人はブルマさんの恋人なんですか?」
「まっさか〜。ありえないわよ。単なる片思い」
 ブルマはシェリンプの口調でべジータの声なので違和感を感じながらそう答えた。
「さわってもいい?」
「どうぞ」
 ブルマは恐る恐るべジータの姿のシェリンプに触れた。
「すごいわね。何もかも一緒だわ。声もね」
「何かして欲しいこととかありますか」
 シェリンプの言葉にブルマは一瞬考えて口を開いた。
「ないわ。久々にべジータの姿を見れただけで満足。何かしてくれるなら本当のべジータがいいの。ま、いつになるかわからないけど」
 ブルマは自虐的に笑った。表情は悲しみに包まれている。
 シェリンプは息を吐くともとの姿に戻った。
(ブルマさんがこんなに会いたがってるのにべジータさんは宇宙に行く気なんだ)
「ごめんね。変なこと頼んで。やらないといけない作業があるから出て行ってくれる?」
 ブルマは穏やかな声でそう言ったが逆らえない響きがあった。

 シェリンプは静かに研究室を後にした。ブルマの後ろ姿は泣いてるように見えた。


posted by ありま at 20:00| DB 2次小説 人造人間編前A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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