2014年02月25日

魔師弟『その感情の正体は?』

 神殿の白いタイルの上に座禅を組んで浮かび上がるのは、元神様、元大魔王だ。
 彼の高まった気で神殿自体が振動する。
 それを見守るのは元神様と神殿の守り主だった。

ピッコロは天下一武道会に向けて気を高める内面の修行をしていた。同時に脳裏で模擬戦を想定し、相手の打つ手読み、封じる。力でサイヤ人に勝つことはもはやできないことはわかっていた。ピッコロが出来ることといえば、先を読むこと、戦略を練ることだった。
 架空の対戦相手は、悟空とベジータ。悟飯のことは考えていない。それは彼のことが眼中にないということではなく、できれば戦いたくない。その気持ちが先立ったからだ。

 ふいに、思考が乱された。消えたはずの不可解な感情、それが沸き起こり、ピッコロの心に纏わりつく。

「はっつ!」
 気を一気に高める。
 しかし、それが消えることはなかった。

 ピッコロは目を閉じ、ゆっくりと床に降り立つ。
「休憩をとる」
 そうデンデとミスターポポに告げ、彼らの傍にをすり抜けて、建物に入っていく。向かうのは自室だ。足早に廊下を歩き、自室のドアを開ける。中に入るとピッコロは椅子に深く腰をかけた。
 その口から出るのは珍しく溜息。
 彼は自分の心に再び巣食い始めた、あの不可解な感情を持て余していた。
 数日前、遠見の術で、弟子の様子を見るとミスターサタンの娘と親しげに話をしているのが見えた。何か妨げるような気がして、ピッコロは4日間、愛弟子に連絡を取るのを控えた。
 すると、真夜中に心に響いた悟飯の声。デンデとミスターポポが就寝し、寝静まった神殿で、ピッコロが瞑想していると聞こえてきた。
 下界の人間は寝静まっている時間だ。ピッコロは瞑想を解くとすぐに遠見の術を使った。弟子は丘の上で空を見上げていた。
 小言を言うと、いつものような素直な返事ではなく、苦しげにピッコロを非難する言葉を吐いた。
『ピッコロさん。どうして連絡してくれなかったんですか?』
 弟子の言葉に師匠の彼は直ぐに返事ができなかった。 
 愛弟子が自分を待っていることをピッコロは知っていた。
 しかし 彼は自分の中の不可解な感情が表に噴き出してしまうのが嫌で、連絡を取らなかった。
 弟子に気付かれないように、気持ちを制御して接した。冷静であることを彼は心がけた。
 それはビーデルという娘のことを聞かされても、一緒だった。
『俺はずっとお前の父親代わりにようなものだった。だからそう思うのだろう』
 悟飯に『僕が一番大好きなのはピッコロさんなんです』、そう言われ返した言葉。
 彼の感情は、そのようなものに違いなかった。
 ピッコロ自身、悟飯に対して同様の気持ちを持っている。それは性別がある地球人なら母性と呼ばれるものだろうとナメック星人のピッコロは理解した。男女の間にある恋愛感情ではなく、我が子に対する感情と同じ性質のもの、ピッコロはそう思っていた。
 だから、彼は弟子にそう返事をしたのだ。

 それから数日経つが、彼の苦しみは続いている。
 弟子の傍にいる若い娘。彼女を見ていると沸き起こる感情。黒く、ねっとりした感情。
 悪の心はまだ心のどこかにあるはずだった。神と同化しても、それはピッコロから悪の心を追い出すまでには至っていないはずだ。
 悪の心なのか。しかし、悟飯に会うまでに抱えていた悪の心とは異質なものに思えていた。
 ピッコロは目を閉じる。そして自分に巣食う不可解な感情に向き合った。


「ビーデルさん、いいよ。その調子」
 地上から悟飯が声をかける。するとビーデルはにこっと笑い、ふわりと草原の上に降り立った。自宅周辺にある見晴らしのいい草原で、彼は彼女に舞空術を教えていた。
「悟飯くんも一緒に飛びましょう」
 彼女は彼の手をとり、上空に誘う。
「え、ビーデルさん!」
 戸惑いながらも彼女には勝てずに、悟飯はビーデルと共に軽やかに空を飛んだ。


 そこまで見て、ピッコロは下界から視線をはずした。
 胸に渦巻くのは黒いねっとりとしたもの。
(やはり、これは俺に残った悪の心か?)
 日増しに酷くなるようで、ピッコロは自分自身がそのうち悪に支配されるのではないかと危惧する。
 大魔王の分身で息子だった自分、しかし今は異なる。ネイル、神と同化したナメック星人だ。

「ピッコロさん」
 静かな声が彼を呼んだ。現地球の神はじっとピッコロを見つめていた。
「それは悪の心ではないと思います。地球で言う、多分嫉妬という感情じゃないでしょうか?」
「嫉妬?!」
 デンデから聞かされた言葉にピッコロは目を剥く。
 嫉妬という感情。神であった記憶もあるので、下界で何度か見かけたことがあった光景が浮かぶ。それは夫婦や恋人同士の間で起きる恋愛感情を伴ったある種の感情。女が男の浮気に怒り狂う場面などが脳裏をよぎる。
「あ、ありえん。そんなわけがない」
 悟飯は弟子であり、それ以外ではなかった。またナメック星人である自分にそんな感情があるとは思えなかった。
 デンデの前でありながら、ピッコロは動揺したまま、神殿の縁をぶつぶつ言いながら歩きまわる。
「ピッコロさん。嫉妬は恋愛感情に関係なくても発生する感情みたいです。だから」
 ――そんなに心配しなくても大丈夫です。
 神様はそう続けたのだが、ピッコロに届くことはなかった。いや、言葉は届かなくてもナメック星人同士、伝わっていたかもしれない。
 ピッコロはデンデの言葉が終わる前に、神殿から姿を消していた。これ以上動揺する自分を見せるのが恥ずかしく、どこか一人になれるところを探して、飛び出していた。
「……言わなければよかったかな」
 問うような、独り言のような、つぶやきをデンデは漏らす。
 数日前からピッコロが思い悩んでいるのが伝わってきた。しかし的外れな悩みだったので、デンデは思わず口を出してしまったのだ。
 しばらく戻って来ないかもしれない。その時は悟飯にでも説得してもらおうと、小さくてもしっかりしてる神様は思った。


posted by ありま at 14:24| Comment(0) | 魔師弟セル編直後ーブウ編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月24日

魔師弟話『好き』の種類

(参っちゃうよな……)

 食卓で今日も繰り返される結婚話。
 ビーデルの父親があのミスターサタンだと知り、一瞬唖然とするがお金持ちということで、気を取り直したチチは、今日も熱心にビーデルに結婚の良さを語っていた。
 舞空術を習いに、4日前からビーデルは悟飯の家に連日訪れている。
 最初は息子を狙う悪い女と決めつけていたチチだが、ビーデルがお金持ちだと知ると一気に結婚に結び付けるようになってしまった。
 元から父親の悟空は仕事をまめにするタイプではなかった。が、それでもいた方が家族としての生活は安定する。
 7年前、悟空が死んでから、牛魔王の財産のみで生活を営むようになってチチは変わってしまったようだ。
 天下一武道会出場を止めることもなく、賞金のために頑張れと悟飯に発破をかける。その上、家に通うようになったお金持ちの息女ビーデルとの縁談を進めようとしていた。
「さ、ビーデルさん。始めようか」
 これ以上二人で恐ろしい話をしてほしくないと、悟飯はクラスメートの勝気な女の子に声をかけた。
 ビーデルのことを好きかと聞かれると、答えは「好き」だった。同年代の女性の友達がいなかったので、今まで比較することはできなかったが、初めてデートしたエンジェラと比べると話しやすく、正義を愛するところなど、気に入っていた。
 しかし、結婚は別だ。
 結婚は愛し合う男女が一緒に生活し、子供を作るものらしい。愛と言われても悟飯にはピンとこないが、好きということなんだろうと思っていた。
(ビーデルさんと一緒に暮らして、子供?!)
 17歳の青年。外部からではなく、自分なりに動物の事を勉強して、子供の作り方などわかっていた。
(あんな恥ずかしいこと……)
 そんなことをしている様子を浮かべ、悟飯は顔を真っ赤にさせる。

「悟飯くん、見て!」
 しかし、そう声を掛けられ我に返る。見上げると地上から3メートルほどの上空で、かなり遅いスピードだが飛んでいるビーデルが手を振っていた。
(いや、なんか。なんてこと考えてるんだ………)
 悟飯は自分の考えたことが恥ずかしくて、顔を左右に振る。
「悟飯くん。ちゃんと見てよ!」
 ビーデルは、クラスメートのちょっと強い青年が反応を示さないことに苛立ち、声を荒げる。
「はいはい。見てます。すごい。その調子ならもう一人で大丈夫だと思うよ」
「まだまだ駄目よ!」
 地上でうんうんと頷く悟飯に対し、ビーデルは強気に言い返す。そしてもっとスピードを上げようと気を高めた。
「あ!落ちる」
 しかし気のコントロールがまだ完璧にできていない彼女は、空中でバランスを崩す。
「ビーデルさん!」
 悟飯は慌てて走ると、落下する彼女を受けとめた。
「……ありがとう」
 頬を少しピンク色に染め、ビーデルはお礼を言う。
「気をつけてくださいね。ゆっくり、焦らないように」
「うん」
 抱きかかえた彼女を降ろしながら、悟飯は優しくアドバイスをした。
(彼女、普通の人にしては頑張っている思うけど、まだ時間かかりそうだな。修行ができない!)
 正直早く帰ってほしいと思っている青年は溜息をつく。
 ビーデルはそんな悟飯に気付くことなく、再び上空に飛び上がっていた。
 (明日も来るのよな。きっと)
 そう思いながら、悟飯はビーデルを見上げる。
(そういや、なんで髪の毛、切ったんだろう?)
 髪が短くなった彼女を改めて見つめて、悟飯はあれだけ怒っていたビーデルの真意を推し量る。
 初日の終わりに、戦う上で邪魔になるかもしれないと髪を切ることを提案した。怒り心頭だったビーデルだが、翌日ショートヘアで現れた。かなり短く切っており、男の子に見えるくらいだった。
 (怒っていたのに、本当、女の子ってわからないな)
 学校に通うまで、同年代の女性と一緒に過ごしたことがなかった悟飯は考える。そもそも、それまで女の子ときちんと話したことがなかった。
 悟飯がたまにクリリンやヤムチャに会うと、彼らはにやにやしながら、彼女できたかと聞いてきた。彼が『彼女』の意味がわからず尋ねると、驚きながら説明した。
 それは一緒に食事をしたり、デートをする相手のことだった。しかも二人っきりでと、その部分を強調された。
 (だったら、ビーデルさんは彼女じゃないんだな。二人きりで食事したりしたことないし)
「よっし。今日はここまで。悟飯くん、ありがとう」
 段々と笑顔を見せてくれるようになり、物腰もかなり柔らかくなったビーデルは悟飯に笑いかける。
 最初は怒られてばかりで、怯えていた悟飯は彼女が今の状態になってくれて安堵していた。
「じゃあ、また明日」
「うん。また」
 明日もやっぱり来るのかと内心落胆しながらも、悟られないように笑顔を作り、悟飯はビーデルを見送る。ジェットフライヤーに乗った彼女は機嫌よさそうにパオズ山から街に帰って行った。
「兄ちゃん。お姉ちゃん、明日もまた来るね」
「うん。とりあえずまだ明るいし、ちょっと修行するか」
「うん!」
 有難いことに、日はまだ高い場所にあった。二人は準備運動をすると走り込みを始めた。


「おやすみ。兄ちゃん」
 ベッドに入り、テーブルランプを消す。悟天はそう言ったかと思うと直ぐに寝てしまった。隣からすやすやと寝息が聞こえる。
 両手を頭の後ろに組み、悟飯は仰向きにベッドに横になった。目を閉じて、眠りに落ちようとする、
 ピッコロに修行をつけてもらってから、4日が経とうとしていた。ビーデルが来てから毎日が慌しく、時間はあっという間に過ぎた。
 しかし、いつも見ていると言っていた師匠から連絡はない。
 (ピッコロさん……)
 日中は騒がしいビーデルと悟天が傍にいることもあり深く考えることはなかった。が、こうして静かになるとピッコロのことを考える。
(おかしいな。たった4日間だけなのに。学校に通っていた時はずっと連絡なかったこともあったのに)
 4日前に久々に彼に抱きついてしまった。ここ数年そんなことをしたことはなかった。そのせいかと自分の気持ちを分析する。
 そうすると急に目が覚めてきて、悟飯はベッドから体を起こした。弟を起こさないように立ちあがる。
(体でも動かせば、疲れて眠くなるかもしれない)
 悟飯はそう決めると道着に着替え、母に気付かれないようにそっと家を抜け出した。

「凄い綺麗だ!」
 少し走り込みをして、小高い丘に登った悟飯は、頭上に広がる満天の星空に見惚れた。修行をしなくなり、夜の遅い時間に外にいる機会が減っていた。
 7年前、いや12年前は、この様な美しい星空を師匠と共に毎日眺めていた。
 悟飯は隣にピッコロの姿がないことを寂しく思う。
(もう子供じゃないのに……)
 感傷的な自分を笑う。
 しかしどうしようもない寂しい気持ちが募り、悟飯は天空にいるピッコロへ想いを伝えるように手を伸ばす。
「ピッコロさん!」
 こんな遅い時間、既に就寝しているはずだった。元神様と言えども意識しない限り、地球のごまんという人々の声から悟飯の声を聞き取るには無理のはずだった。
 だが奇跡は起きる。
『悟飯、こんな時間に何をしているんだ?日中できないと言ってもこの様に遅い時間に修行するのは無意味だぞ』
 師匠の淡々とした声。脳裏に響くその声に悟飯の胸が震える。
『悟飯!聞いているのか?』
 何時もなら即答する筈の弟子から返事がなく、ピッコロの声に感情が籠る。
「ピッコロさん。どうして連絡してくれなかったんですか?」
 悟飯がやっと返した言葉は非難だった。ピッコロは言葉を詰まらせる。
 師匠が黙ってしまい、悟飯は自分の言葉を反芻し、妥当ではなかったと反省する。
「すみません。子供のような事を言ってしまいました。心配してくださってありがとうございます。眠れなかったので少し体を動かそうと思っただけです」
 悟飯は美しい夜空を仰ぎ、上空のピッコロを想う。師匠の言葉は的確だ。自分のこんな気持ちは彼にとっては迷惑にすぎない。
 子供の時のように素直に気持ちを伝えられたらと、青年になった悟飯は昔を懐かしむ。
『……俺は、お前を毎日見ていた。だから忙しそうなお前に声をかけなかったんだ』
 ふと、沈黙の後に、ぽつりと独り言のように師匠がつぶやくのが聞こえた。
『連絡しなくてすまなかった」
「そんな、僕こそすみません。催促してしまって……。修行しないといけないのに、僕のことで。ピッコロさん、こんな時間まで起きてて大丈夫なんですか?」
「それは俺の台詞だ」
「あ、そうですね」
 くすっと悟飯は笑う。先ほどまでの不安が嘘のように消えていた。
「……ピッコロさん。お母さんがビーデルさんと僕を結婚させようとしているのです」
 笑顔から真顔になって悟飯は師匠に告げる。
 反応はない。次の言葉を待っているようで、彼は口を再び開いた。
「結婚って愛し合う男女が一緒に住んで子供を作ることです。僕は愛って言葉がよくわからないのですけど、一緒に住むならビーデルさんよりも、ピッコロさんがいいです」
 息を呑むような間があった。悟飯は自分で馬鹿なことを言っていると自覚があったので、苦笑する。
「でも結婚は女性としないといけなくて……。だからピッコロさんとは無理みたいです。今のところ、僕はビーデルさんしか同年代の女性を知りませんし、ビーデルさん、怒りやすくて怖いんですけど、僕と同じで悪い奴が許せなくて、いい人です」
『……そうか』
 脳裏に響くピッコロの相槌、感情を押し殺しており、悟飯には彼の考えがわからなかった。
「僕は多分女性の中ではビーデルさんが好きです。でも、僕が一番大好きなのはピッコロさんなんです」
 静まり返った丘で、悟飯の声だけが聞こえる。野生動物も、虫達も声を顰めて彼の様子をうかがっているようだった。
『……それは前から知っている。俺はずっとお前の父親代わりにようなものだった。だからそう思うのだろう』
「……そうでしょうか?」
 悟飯自身、好きという感情の種類がまだよくわかっていなかった。そう言われればそうかもしれないと思う。
『そうだ。それよりも、あの娘は明日もくるのか?』
「はい。だから修行ができないんです」
 急に現実問題に引き戻され、悟飯の思考は明日に向かう。天下一武道会までに7年間のブランクを埋めるために修行する予定だった。が、ビーデルによってそれが邪魔されている。
『自分で撒いた種だ。最後まで責任を持つんだな』
「はい」
 師匠の小言に悟飯は素直に頷く。
 舞空術を教えると約束したのは彼だった。教え始めた今、彼女が納得するまで付き合うのが礼儀だった。
『もう遅い。家に戻って寝ろ。目を閉じていればそのうち眠くなるだろう』
「はい」
 少しだけ釈然としない、しこりのようなものが心に残ったが、ピッコロと話せて悟飯の気持ちはかなり落ち着いていた。
「おやすみなさい」
「ああ」
 空に浮かぶ満天の星空。師匠も同じ空を見ていてほしいと頭上を仰ぎながら手を振る。すると急に眠気がやってきて、悟飯は欠伸を噛み殺しながら自宅への道を急いだ。
posted by ありま at 10:52| Comment(0) | 魔師弟セル編直後ーブウ編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月21日

うーん。

やっぱり受けないか―。
ベジブル小説の『永遠の片想い』と『カエルトコロ』はかなり評判がいいみたいです@PIXIV。

でも今書いてる飯p、いや魔師弟はいまいちですね。
多分新鮮味がないせいもあるんだろうな。
でもこうやって順番追って書いていくと、二人の気持ちがよく自分でもわかるので
このやり方が変えられない。

最終目標はブウ編直後の話。

それまで、こつこつがんばるぜ。

ありま氷炎
posted by ありま at 12:01| Comment(0) | 魔師弟セル編直後ーブウ編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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