2011年05月29日

変わらぬもの 2の2

「ブルマ」
 そんなことを思っていると声が聞こえた。
 それは愛おしい男の声だった。
「べ、ベジータ?!どうしたの?」
 ブルマは泣いている自分を見られないように慌てて顔を逸らす。
「は、早かったわね。っていうかまだ1時間も経っていないじゃない?!」
 ブルマは立ち上がり、わざと声を張り上げてそう言った。
 声が鼻声で気づかれたくなかった。
 こんな馬鹿なことで泣いているなんて思われたくなかった。

「?!」
 ふいにぐいっと腕を掴まれ、ブルマはベジータの胸に引きよせられた。
「どうしたんだ?」
 ブルマはベジータの胸の暖かさとその言葉に止まっていた涙腺がまた緩むのがわかった。

 出会ってから数十年が経ち、彼は変わった。
 こんなにも自分を心配してくれる。
 殺すと連呼していた時が信じられないくらいだった。

「最近おかしいぞ。何かあったのか?」
 ブルマは嗚咽だけで、ベジータの問いに答えられなかった。
 ベジータはブルマの髪を優しく撫でると、唇にそっと触れるキスをした。
「ベジータ……。あなたを愛してる。だから、私は年取った自分を見られたくないの。こんなに醜くなっていく自分が嫌なの」
「お前はなんでそんな馬鹿なんだ」
 ベジータは深く息を吐くと、ブルマを抱きしめた。
「俺にとって外見など意味をなさない。俺にとって女はお前ただ1人だ。わかったな」
 ブルマはそう言ったベジータの顔が赤くなっているのがわかった。

 こんなこと言われたのは初めてかもしれない。

 ブルマはぎゅっとベジータの背中に回した手に力を込めた。
「ベジータ……」
 
 ベジータはブルマの頬を両手で掴むと唇を重ねる。
始めは優しく触れるようなキスだったが、それは徐々に熱を帯びて、ブルマは頭がぼうっとするのがわかった。

「んっつ。べ、ベジータ!ブラは?!」
 甘美な感覚に身をゆだねながらもブルマははっと母親の顔になった。
 年頃のかわいい女の子が一人で買い物など、危険気回りなかった。
「安心しろ。トランクスがそばにいる」
 ベジータは舌打ちまじりにそう答えると、ブルマを抱き上げた。
「ちょ、っと」
「今日は誰もいない。邪魔するものはいない」
 ベジータはそう言うと、ブルマを抱いたまま研究室を出る。そして部屋に上がるためにエレベータのところへ歩いていく。
 ブルマはベジータに抱きかかえられ、その鼓動を聞いた。
 規則的な鼓動が徐々に早まっているような気がした。

 部屋に入るとベジータはブルマをベッドに寝かせ、着ているTシャツを脱いだ。

 戦闘服を着なくてなってどれくらいかしら?

 見事な筋肉質の体を見ながらブルマはふとそんなことを考えた。

「ベジータ、ちょっとカーテンしめて」
 明るい部屋で自分の老いた体を見られるのは嫌だった。
 しかしベジータはカーテンを閉めようともせず、ブルマの服を脱がせる。
「ちょっとベジータ?!」
「お前は俺の女だ。お前のすべてを見たい」
 ブルマはベジータの言葉に泣きそうになりながら、その胸に顔をうずめる。
「ねぇ。ベジータ。私きっとすぐおばあちゃんになっちゃうわよ。それでもいいの?」
「……」
 ベジータはブルマに答えずただ、唇をブルマの首筋に這わせた。
「ねぇ。ベジータ」
 ブルマは体を捻り、ベッドから体を起した。
 答えのないまま、抱かれるのは嫌だった。
「まったく、当たり前だ。お前はお前だ。俺の唯一………女だ」
 ベジータはその黒い瞳をじっとブルマに向けてそう言うと、ブルマをベッドの押し倒す。

 ブルマは涙が止まらなかった。
 いつもなら何か答えるはずの口がうまく動かなかった。

「ブルマ……」
 ベジータはブルマの涙を唇で拭い、そのままゆっくりと唇を重ねる。

「ありがとう。ベジータ愛してる」
 明るい部屋の中で、2人は静かに愛を確かめあう。

 ずっとしてきた行為なのに、今日は特別な気がしていた。



 



 


posted by ありま at 02:49| Comment(0) | DB 2次小説 1周年記念短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

変わらぬもの 1の2

「…はあ…」
 ブルマは鏡を見るとため息をついた。
 そして鏡の中にいる自分を再度見つめる。

 たるんだ頬に、目じりによる皺。

 数えたら数え切れないほどの老いを感じさせる顔。

 鏡に映る愛しい男は今日も老いも感じさせない美しい肉体を見せている。

「おい、ブルマ。出かけるんじゃなかったのか?」
 戦いの日々が終わり、地球人として暮らすようになった男はそう聞いた。
 ブルマはため息をつくと振り向いて男を見る。

 男の名はベジータ、
 惑星ベジータ生まれの男で、サイヤ人である。
 地球に来たばかりのころは、地球人を虫けらのように思っていたようだが、今や普通に地球人として暮らしているようだった。

「母さん、母さんは行かないの?」
 そう言いながら自分そっくりの娘、ブラが顔を見せた。
 ブルマは娘の顔をみて、再度ため息をつく。

 張りのある顔、胸、そしてなめらかな肌。
 自分が失ったものがそこにすべてあった。

「父さん、準備はできたの?」
 そう言ってベジータに腕を絡ませるブラをみて、ブルマは胸が痛むのがわかった。
 
 そう、それは嫉妬。

 自分の娘に嫉妬してどうするのよ。

 ブルマは気づかれないように小さくため息をつくとブラに微笑んだ。

「今日、私は遠慮しておくわ。2人で楽しんでらっしゃい」
「?どうして?」
「いいの、いいの。ベジータ。ちゃんと悪い虫がつかないように見て置いてよね」
「わかってる」
 ベジータが何か言いたげにブルマを見たが、ブルマは気づかないふりをした。

 年取った自分、若い夫。
 一緒にいたいのに、一緒にいると自分の老いを感じ、嫌われているのではないかと怖くなった。

 そういえば、最近、夜も別だしね。

 ブルマは2人を見送りながらそう思い苦笑した。

 こんなおばさんになった私なんて、抱きたくもないかしら。

 ブルマは玄関から研究室に向かいながら、つんと鼻が痛くなるのがわかった。
 なぜか泣きたくなった。

 年を取ると涙腺も弱くなるのかしら?

 ブルマはそう思い、また気持ちが暗くなるのがわかった。

 研究室に入り、パソコンの電源を入れる。
 ふいに見覚えのある設計図がふいに現れ、ブルマは驚いた。

 トランクスかしら?
 人造人間の設計図なんかどうする気なのかしら?

 画面に映し出された設計図は16号のものだった。
 未だに色あせない技術力、ドクターゲロのことは嫌いだが、その頭のよさには感服していた。

 まあ、勉強しておくにはいいわよね。

 ブルマは昔のことを思い出しながらも、自分には必要がないものだと設計図を閉じた。そして現在進行中のプロジェクトのフォルダーをクリックする。

 トランクスが会社に入るようになり、ブルマの負担はかなり減った。
 こうやって研究に没頭することができるようになっていた。

 最近のブルマは研修室に籠ることが多かった。
 それはベジータに会うのを避ける意味もあった。
 老いた自分を見せたくなかった。

 どんなに着飾っても、化粧しても老いは隠せなかった。

 身近に自分そっくりの若い娘、ブラがいれば、なおさら老いは目立った。

「あ〜だめだ」
 気持ちを切り替えるために研究室に来たのに、ブルマの気持ちは晴れなかった。
 娘ブラが楽しそうにベジータと買い物する姿が浮かび、ブルマの気持ちをかき乱す。

 私って最低だわ。

 ブルマはそんな自分が嫌になり、顔を両手で覆う。 

 泣くならいまね。

 帰ってきたら笑顔でいなきゃ。

 ブルマはそう自分に言い聞かせる。
 そして涙が瞳から一粒一粒零れ始めた。

 本当、神龍に願って若くしてもらおうかしら。
 不老不死だと困るから、不老にしてもらうとか。

つづきへ
http://arimahien.seesaa.net/article/205359563.html?1306605167

posted by ありま at 02:45| Comment(0) | DB 2次小説 1周年記念短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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