2011年04月25日

ムカシノオトコ6

「貴様、殺してやる!」
 上空でべジータがそう言って力を貯めるのがわかった。両手に眩しい光が集まる。
「べジータ!やめて!」
 ブルマの叫びは届くことはなく、べジータの手から光が放たれる。
「うぉお!!」
 光はまっすぐヤムチャを襲い、弾けた。


「!」
 目を開けるとちかちかとパソコンの画面が点滅しているのが見えた。
(あ、わたしったら、寝ちゃったんだわ。それにして嫌な夢)
 ブルマは早鐘を打つ心臓を落ち着けようと、深呼吸をした。研究室の中は静まり返り、パソコンが起動する音だけが聞こえた。
 トランクスは退屈で泣き出してしまったので、ブルーフ博士が外に連れ出していた。

なんて夢、みちゃうのかしら。
べジータがヤムチャを殺す夢なんて…
最悪だわ。
 ヤムチャが神殿に向かって飛んで、数時間が経とうをしていた。
(もう戦闘服は届けて、カメハウスに戻ったかしら?自分をまだ好きだと言っていたヤムチャ‥‥。べジータの気分を逆撫でするようなことをしてないといいんだけど……)
 ブルマは研究室の壁にかけてある電話を見つめる。
(考えすぎ…よね?べジータがヤムチャを殺すなんて考えたくないけど……)
 ブルマはヤムチャのことが急に心配になった。
(確かめてみよう)
 ブルマはそう決めると立ち上がり、壁に掛けてある電話から受話器を手に取った。


「ヤムチャ様ですね。ちょっとお待ちください」
 プーアルの声がそうして、受話器がコトンと置かれる音がした。遠くでプーアルがヤムチャを呼ぶ声が聞こえた。
(もうカメハウスに戻ってるみたいね。何もなかったのかしら?)
「ブルマ?どうした?」
 ブルマがそんなことを考え、待っていると穏やか声が受話器から聞こえた。
(いつもと同じ声。何なかったみたいね)
「戦闘服の配達、お願いして悪かったわね。べ、トランクスに会った?」
 ブルマは自分の心配が考えすぎだったことにほっとしながら、そう聞いた。本当はべジータのことを聞こうと思ったが、ヤムチャにそれを聞くことは戸惑われた。
「ん、ああ。会ったよ。相変わらず礼儀正しい奴だよな。未来のお前はきちんと育てたみたいだな」
「なによそれ。褒めてるの?」
 ヤムチャの言葉にブルマは口を尖らせた。
「ああ、褒めてるよ」
 ヤムチャはブルマの反応が面白いようで、くすくす笑いながらそう答えた。
「あ、そうだ。……べジータには会わなかったよ。ちょうど精神と時の部屋に入っていたみたいだった」
 ヤムチャは笑いを含んだ声をがらりと変えると、そう言った。その声は淡々としており、感情が読み取れなかった。
「そう……」
 ブルマはそうつぶやくと黙った。
 自分のことを好きである男に、自分の愛する男のことを言わせる。なんて嫌な女だと自分で思った。

「そうそう。俺がお前の使いで来たと言うと、ベジータが嫉妬するか試したかったんだけど、出来なかった」
「え?!」
 ヤムチャがふいにそう言ったので、ブルマは一瞬何を言われたのか分からなかった。そして言葉の意味がわかると唇を噛んで、小さい呟きをもらした。
「……嫉妬なんてするわけないわよ」
(ベジータが嫉妬なんて考えられなかった。だいたい告白もされてないし……ベジータに好かれているとは思う。優しく自分を撫でる手、安心させるようにされた優しい口づけ‥)
 あれらの行為からベジータからの好意を感じることはできた。しかしブルマはベジータが自分に愛の言葉を囁く日が来ないことを知っていた。そして自分に告白するベジータの姿を浮かべて、再び苦笑した。
(ありえないシチュエーションだわ)
「ブルマ?」
「ごめん、ごめん。ちょっと心配だったから電話したの。だって、ヤムチャってベジータの神経を逆なですること言いそうだったから」
「俺が?俺じゃないよ。あいつが俺の神経を逆なでするんだ」
 電話口からヤムチャの少し苛立ったことが聞こえた。
「ごめん。そうよね。」
 ヤムチャの言葉はその通りだった。ベジータは人を馬鹿にする傾向があり、ブルマもベジータの言葉に何度もむかついたものだった。
「お前が謝ることじゃないさ。あいつも以前よりはましになってるし。とりあえず心配してくれてありがとうな」
「うん」
「俺はお前をいつも見守ってるから。あいつが嫌になったらトランクス連れて来いよな」
「……ありえないわよ」
「冗談だよ」
 ヤムチャの苦笑した声が聞こえた。
「ま、お互いがんばろう。俺も修行してみる。役にたたないだろうけどな」
「そんなことないわよ」
 ブルマがそう言うとヤムチャがまた苦笑するのが電話越しにわかった。開いてしまった力の差、出会ったばかりのころは悟空もヤムチャも力は変わらなかった。
「じゃ、またな」
「うん」
 ブルマはそううなずくと、受話器を元の場所に戻した。そして壁に背を向け寄りかかる。見上げる天井には明るい電灯が輝いていた。
(自分を優しく見守ってくれるヤムチャ。でも甘えるわけにはいかなかった。自分の好きな男はベジータだ。

『ベジータが嫉妬するか試したかったんだけど、出来なかった』
 ヤムチャの言葉がふいに思い出される。

(嫉妬か……ありえないわね)
 ブルマは苦笑すると、壁から離れ、再び机に座った。そしてパソコンの画面を見つめる。画面は数字やアルファベットの羅列で埋め尽くされていた。
 マウスを動かして数字群をクリックすると悟空のデータが現われた。
「今はそんなことを考えている時じゃないわね」
 ブルマは気合を入れるために、頬をパシッと自分で叩いた。
 自分にはやるべきことがある。ベジータ達がセルを倒すために、修行しているように、ブルマもセルと戦ってくれる16号を修理する役目がある。
「がんばるわよ!」
 ブルマは気合を入れるとパソコンの画面上の暗号のような数字とアルファベット列と格闘し始めた。




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2011年04月24日

ムカシノオトコ5

「え?!届けてくれるの?!」
「ああ、一日くらい修行してもしなくても変わらないから。それよりお前は16号の修理が大変なんだろう?」
「うん、そうだけど……」
「大丈夫だって。ほら、カプセル渡して」
 ブルマは珍しく遠慮がちにヤムチャにカプセルを渡した。

 ヤムチャが帰ろうとしたところ、ブルマの会社の者が戦闘服の複製が入ったカプセルを届けにきたのだ。16号の回路が思ったより複雑で、修理を先に進めたいと思っていたブルマは、いつ届けようか迷っていた。そんなブルマに助け船を出したのがヤムチャだった。
 早く完成させたいブルマにとって、ヤムチャが戦闘服を神殿に届けてくれるという申し出はありがたかった。
(でも、なんで届けてくれるんだろう?ベジータのことあんなに嫌いなのに?)
 ヤムチャを見送った後、ふとそんな疑問がブルマの頭をよぎった。しかし、研究室に戻る道筋で、16号のことを考え始め、その疑問は頭の片隅に追いやられた。


「ヤムチャさん!」
 トランクスは神殿に現れたヤムチャを見て少し驚いて、そう声をかけた。
「トランクス……お前1人か?」
 神殿に、トランクスの姿しか見えず、ヤムチャは訝しげに周りを見渡した。
「父さんは今、精神と時の部屋で修行中です。ピッコロさんは多分神殿の中にいると思うんですけど……」
「そうか…残念だな」
 ヤムチャはそうつぶやいた。
ブ ルマの使いで戦闘服を届けにきたと言って、ベジータがどう反応するか見たかったのだ。仮にもヤムチャはブルマの昔の男である。ベジータのいないところで、ブルマが昔の男と会っていたということで、何かしら反応を見えるかもしれないと期待していたのだ。
 しかし本人がいないのであればその反応も見ようがなかった。
(まあ、奴が嫉妬なんてするわけないが……ブルマもよくあんな男を……)
 ヤムチャは神殿の奥にあるドアを見つめる。
(奴がどうであれ、ブルマが心変わりしないのは確かだ。俺も情けない)
 ヤムチャはため息をつくと視線をトランクスに戻した。そしてトランクスの瞳にブルマと同じ輝きを見出し、親子であることを改めて認識する。
「お前って、ブルマとベジータのいいとこどりだよな」
「え?」
「体はベジータだけど、顔はブルマに似てるよな」
「そ、そうですか?」
 トランクスはヤムチャにじっと見つめられ、すこし顔を強張らせた。褒めれてるような、けなされているような妙は気持ちだった。
「えっと、ヤムチャさん。そんなこと言いに、ここに来たわけじゃないですよね?」
 トランクスの言葉にヤムチャは苦笑した。こういう生真面目なところはどちらにも似てないようだった。
「ああ、悪い、悪い。目的を忘れるとこだった。ブルマの代わりに戦闘服を届けにきたんだ。なんでも16号の修理に手がかかってるみたいだから」
 ヤムチャはそう言うと道着のポケットから小さなカプセルを取り出した。
「すみません。ありがとうございます」
 トランクスは少し恐縮したようにお礼を言い、ヤムチャからカプセルを受け取った。
「じゃ、俺は帰る。役にはたたないが俺も修行してみるよ」
 ヤムチャはトランクスに笑いかけると背を向けた。
「がんばってください」
 トランクスはその背中にそう声をかける。
 セルを疲れされるという意味で多くの者がセルゲームに参加したほうが有利なのは確かだった。純粋な地球人ではヤムチャやクリリンがトップクラスの戦闘力を持つことはトランクスにもわかっていた。
「じゃあな」
 ヤムチャは振り向きトランクスに手を振ると、神殿から飛び立った。風が一気にヤムチャの肢体に襲いかかる。しかし、ヤムチャは気を高めると風の抵抗を物ともせずカメハウスに向けて一気に飛んだ。



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2011年04月23日

ムカシノオトコ4

「あら、ヤムチャさん。どうしたの?忘れ物?」
 庭の花壇に水を撒いていたブルマの母は空から現れたヤムチャに驚きもせず、にこりと笑った。相変わらず年齢不詳な人だと思いながらもヤムチャは笑顔を返す。
「こんにちは。ブルマのお母さん。ブルマは今研究室ですか?」
「ブルマ?そうそう、研究室よ。ブルマに用があるの?私と一緒にお茶でもしないかしら?おいしいケーキとお茶があるのよぉ」
「あ、えっと。また今度一緒に」
 ヤムチャは強引にお茶に連れて行かれそうになるのを断ると、慌てて研究室のある建物に逃げるように向かった。
「あらまあ。残念ねぇ」
 ブルマの母はヤムチャの背中を見送った後、花壇に再び水を撒き始めた。


「おお、ヤムチャくん」
 研究室のスライドドアのインターフォンがなり、ブリーフ博士がドアを開けるとそこにはさわやかな笑顔を浮かべるヤムチャの姿が見えた。
「ヤムチャ?」
 父ブリーフの声にブルマはパソコンの画面から顔を上げ、振り向く。
「ブルマ。話があるんだ。今いいか?」
「忙しいんだけど?」
 あと9日でこの複雑な人造人間を修理する必要があった。ブルマは余計なことに時間を使いたくなかった。
「ブルマよ。トランクスもずっと研究室にいて退屈だろう。ヤムチャくんと話をしながらトランクスも遊ばせるといいぞ」
「…そうね」
 ブルマは小さな研究室の中のマットレスの上で、つまらなそうにしているトランクスを見るとうなずいた。
「いいわ。ヤムチャ、庭で話をしましょう」
 ブルマは背伸びをするとトランクスを抱きかかえ、そう言った。ヤムチャは少しさびしそうな表情を浮かべたが、庭に出るため、スライドドアを開けた。


 ピッコロが精神と時の部屋に入り、20時間が経過していた。
 仮眠をとるため数時間、神殿で寝たがそれ以外はべジータはトランクス相手に組み手を続けていた。体を休ませれば、おかしな考えが浮かんだ。特にトランクスの髪は風にそよぐたびにブルマを思い出し、いらだたせた。早くあの部屋に入り、真っ白な空間でただ戦いのことだけを考えたかった。


 ブルマとヤムチャは庭にある小さな森に来ていた。そして木の陰にシートをひき、そこに座る。トランクスは飛んできた蝶々を見つけると、ブルマを尻目にはいはいで追いかけ始めた。
「トランクス〜。遠くに行ったらだめよ」
 ブルマはそう声をかけると立ち上がる。
「なあ。ブルマ。なんでお前はべジータが好きなんだ?」
 ヤムチャはそんなブルマの背中にそう話しかけた。思わぬ質問にブルマはぎょっとして振り向く。しかし自分を見つめるヤムチャの表情は真剣そのもので、ブルマは気持ちをかき乱された。
「…私にもわからないわ。理由なんてない。ただ好きなのよ」
 ブルマはヤムチャの黒い瞳から避けるように顔を背けると、トランクスを抱き上げ、そうつぶやいた。
「俺はまだお前が好きだ。だからあいつがお前に冷たいのが許せない…」
 ヤムチャは自分に背を向け、トランクスをあやすブルマを見上げてそう言った。
「ヤムチャ…」
 ブルマはなんと言うべきか言葉が見つからず、トランクスを抱きしめる。好かれていることは嬉しかったが自分の気持ちはすでにヤムチャにはない。
 好きなのは、愛してるのはベジータだけだった。
 例え彼が自分を好きだと言わなくて、ブルマは一生べジータのそばにいるつもりだった。
「俺は本当馬鹿だな。セルが人間を滅ぼそうとしているときに、こんな馬鹿なことでお前の邪魔をして…」
 ヤムチャは自虐的な笑みを浮かべながらそうつぶやいた。ブルマに会えば自分の中の気持ちに整理がつくと思った。あきらめられると思った。しかし思いは高まるだけでなくなることはなかった。
「俺‥カメハウスに戻る。邪魔して悪かったな。あと9日修行してみる」
 ヤムチャは明るくそう言うと立ち上がった。ブルマはトランクスを抱いたまま、ヤムチャを見つめた。笑顔を浮かべていたが、その笑顔が作りものであることは一目瞭然だった。
「ヤムチャ…ごめん」
「あやまることはないさ。俺たちは3年前に終わっているのだから」
 ヤムチャはブルマの腕の中のトランクスの頭を優しくなでながらそう言った。



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