2014年11月18日

☆様とのコラボ作品「偉い学者さんとスーツの『男』」4/4



悟飯45歳のお話です。
飯ビー、恋愛要素を含まない魔師弟好きの方には痛い話なので、
読まないでくださいませ。
またGTは全く踏まえておりません。(見たこともないので)

興味ある方は下記からどうぞ。

そうしてハーバル賞授賞式の当日がやってきた。
 式は午後三時から始まり、晩餐会と続く。
 悟空は気を感じて瞬間移動する。が、会場には知っているものがいなく、ブルマから飛行機を借りて、皆で行くことになった。

 受賞者は昼食を取りながら打ち合わせがあるということで、悟飯、ビーデル、パン、悟天とチチは十一時過ぎには飛行機に乗り込んだ。運転するのは悟天で、ブルマから借り受けてきたのも彼だった。
 悟空はご馳走が晩餐会のみだと聞いて、後から瞬間移動して行くことになった。
 三時だからと念を押して、一同は悟空を置いて飛び立つ。

「お父さん、遅れて来るかな」
「そげなこと、おら絶対にゆるせねぇぞ」
「まあまあ、僕は最後のほうになると思うから大丈夫だよ」
 ハーバル賞には数学賞、化学賞、生物学賞の三つがある。
 悟飯が受賞したのは生物学賞だ。

 各受賞者の論文を、マスコミ向けにわかりやすく発表して、その後に受賞となる。
一人あたり三十分ほどかかるはずなので、一時間ほど遅刻しても悟飯の番には間に合うはずだった。
 ――でもお父さん。きっと遅刻は一時間ですまないだろうな。
 小さいころから父親に待たされてきた。
 待つのには耐性がついているが、自分の晴れ舞台には間に合ってほしいと悟飯は密かに思った。

「パパ。本当にピッコロさんを誘わなくてもよかったの?」
「悟飯!ピッコロさに話してないべか?」
 パンの言葉に、チチが呆れた声をあげる。
「パン。この話は終わったっていっただろう。ピッコロさんは忙しいんだ」
 自分の気持ちをかき乱されたような気がして、悟飯は苛立ちを交えて答えた。
「悟飯!パンちゃんに当たんじゃねぇべ。ピッコロさがこれねぇのは残念なのはわかっが。パンちゃんに当てるのは筋違いだべ」
「……そうだね。悪かった。パン。ごめん。お母さんも。メダル貰ったら、ピッコロさんに見せに行こうかな」
 飛行機の中の雰囲気を自分の一言で変えてしまった。それを反省して、悟飯は努めて明るい声を出す。
「そだな。そうしろ。あ、悟天。おめぇビデオ持ってきたか?」
「うん。カプセルコーポレーションの最新のモデルを借りてきたよ。これでばっちり撮るから、ピッコロさんにも見せてあげなよ」
「そうだな。ありがとう。悟天」
 家族の気づかいが優しく心に入り込む。しかし、自分がピッコロを呼べないのは全く違う理由だ。
 それを思い、悟飯は心の中で小さく嘆息した。

「ようこそ。孫悟飯教授。ご家族の方はあちらの部屋へどうぞ。食事も用意しております」
 悟飯以外にも家族を連れてきているものはいるようだった。
 賑やかな声が別の部屋から聞こえてきた。
 ――これなら、お父さんも先に来たほうがよかったかもな。食事を家族用に用意してるなんて思わなかった。
 けれども携帯電話を持たない悟空と今更連絡することなどできない。
 ――まあ、晩餐会のほうが食事も多いだろうし。いいか。

「孫教授。初めまして」
 そんなことに気を取られていると声をかけられ、悟飯は慌てて姿勢を正す。
「ユニ博士!」
 分野が異なる悟飯でも知っている有名な博士が、目の前にいて、思わず大きな声を出してしまった。
「す、すみません。初めまして。ユニ博士。僕は孫悟飯です」
 ぺこりと頭を下げた後、悟飯は手を差し出す。
 白い長い髭を生やした老年の男――ユニは微笑みを浮かべ握手を返した。
 ユニの名前は受賞者には入っていなかった。悟飯は戸惑いを隠せず、ぎこちない笑顔を浮かべた。するとユニの後ろから男が顔を出した。
「孫教授。初めまして。バーシティです。実は今回は私が化学賞を受賞させていただいたのですが、父がどうしても、打ち合わせにも参加したいとごねまして」
 それは五十代の細身の男だった。黒眼鏡をかけており、髪は金髪。眼鏡の邪魔になりそうなくらい、長い前髪が印象的だった。
「バーシティ博士。初めまして。そうでしたか。すみません。驚いてしまいまして」
「謝ることなんてないですよ。これも父が突然呼びかけたりするからです」
 こうして受賞者の一人と会い、後から来た数学賞の受賞者を待ち、昼食が始まる。
 式の流れなども、司会から説明があり、悟飯はいよいよ本当の意味で受賞するのだ、と胸が熱くなった。

 ★

 パンたちは悟飯たちの隣の部屋で食事をとっていた。三つのテーブルが用意され、それぞれの家族が一つずつ使った。
 サイヤ人ハーフの悟天は父親には敵わないががつがつと食べていた。パンは女の子なので、がつがつとはいかない。しかし通常の地球人よりは多くの食事をとる。
 しかし、今日は難しい顔をしたままで、あまり食が進まない様子だった。
「やっぱり私は納得いかないわ」
 そう言うと、パンは不意に席を立つ。
「パン?」
 ビーデルが非難を込めて娘の名を呼ぶ。
「ママ。悪いけど、私ちょっと神殿に行ってくるわ。ピッコロさんに来てもらうように説得してくる!」
「パン!」
 彼女を止めることなど誰にもできなかった。気がつくとパンの姿は部屋から消えていた。
「パン……」
 部屋の入り口を見ながら、ビーデルは力なく呟く。
「ビーデル。好きなようにさせてやるべ。ピッコロさがだめって分かったらすぐ戻ってくるさ」
「お母さん……」
 チチの言葉はもっともだった。しかし、ビーデルには別の思いがあった。
 ピッコロに来てほしくない。来たら悟飯がピッコロのことしか見なくなることはわかっていた。この晴れ舞台、妻として悟飯の傍で笑っていたかった。
 誰にも話せない思いーーずっとひた隠しにしている思い、それを抱えるビーデルは泣きそうになるのを必死に堪えていた。


「ピッコロさーん!」
 女性の声が神殿に響き渡る。
 神殿に女性の来客は少ない。しかも乗り物を使わず来られる者は限定された。
「パンさん!」
 自分より年下。それにも拘わらずデンデはパンのことをさん付けで呼んでいた。
「どうしたのですか?」
「デンデさん!す、すみません。すごく急いでるんです!ピッコロさんどこですか?」
「ピッコロさんは建物の裏にいると思いますが」
「あ、ありがとうございます!」
 パンは深々と頭を下げると、建物の裏側に急ぐ。

「パン」
 誰が神殿にくるか、気でわかっていた。しかし、要件が予想できたので、ピッコロは構わず瞑想を続けていた。が、背後に気配を感じてしまい、目を開き立ち上がるしかなかった。
「ピッコロさん!全然暇じゃないの!パパの嘘つき。もう、わけわかんないわ」
「パン?」
 少し耳に障るくらいの高い声でまくし立てられ、ピッコロは目を細めた。
「あ、ごめんなさい」
 自分の声が耳障りなことに気が付き、パンは少し声を落とし謝る。
 悟飯同様、ピッコロのことを尊敬していた。耳が良いピッコロにとって甲高い音が耳に触ることはわかることだった。パンは要件も忘れしゅんと肩を落とす。
「気にするな。パン」
 ピッコロは穏やかな声でそう言う。しかし顔を上げたパンを待っていたのは頑な言葉だった。
「パン。お前の要件はあらかた予想している。悟飯の受賞式のことだな。俺はいかん」
「そんな!どうして?だって忙しくないんでしょ?」
 声を張り上げそうになるが、どうにかコントロールして声を抑えたまま、パンは問う。
――悟飯が来てほしくないのだ。
 理由はこれだった。
 しかし、言葉に出すと子供のようで、ピッコロは何も答えず、パンを見つめる。
「ピッコロさんも、パパも。よくわかんない。でもパパは絶対に来てほしいと思うの。だから、ピッコロさん、お願い!」
「……悪いがそれはできない」
「ピッコロさん、なんで?理由を教えてよ!」
 パンの追求が胸を突く。 
 しかし、ピッコロの意志は変わらなかった。
「ピッコロさんの馬鹿!」
 全宇宙のヒーローの孫で、宇宙一最強の男の娘は無敵だった。元神様であり元大魔王にそう悪態をつくと、神殿を飛び出した。
「パンさん!」
 デンデが慌てて呼ぶが、超スピードで飛んでいるパンには届くはずがなかった。
「……行っちゃいましたね」
 仰いでいた空からピッコロに視線を向け、デンデはつぶやく。
「どうして行かないのですか?」
 身長はまだピッコロより低い。だが、立派な成人の大きさに成長したデンデは責めるようにピッコロを見つめていた。
「悟飯さんは本当に来てほしいのです。ピッコロさんを誘えない理由。それがお分かりですか?」
 神様としては許されないかもしれないーーしかし、デンデは二人の関係に気が付き、長い間そっと見守ってきた。
「……私からもお願いします。行ってあげてください。悟飯さん、きっと喜ぶと思います」
「……そう思うか?」
「はい。それはピッコロさんが一番わかってるはずですよ」
「……そうだな」

 悟飯の気持ち、思いを一番理解しているのは自分だった。自分でなければならなかった。
 彼が夢を叶える瞬間、全世界で偉い学者として認められる瞬間、
 その場に自分がいないとどうするのだ。

「ピッコロさん。私から悟飯さんに贈り物があります」
 デンデは微笑むと指先をピッコロに向けた。
「!?デンデ!何を!」
 一瞬でピッコロの服装が変わっていた。
 茶色に近い緑色のスーツに、黒地のシャツ。首元には赤銅色のネクタイが結ばれている。
 頭には触角を覆うために、スーツと同色の中折れ帽子が被せられていた。
「受賞式にはそれなりの恰好が必要らしいです。その格好であれば、下界の人間として中に入れるはずです」
「おっつ。ピッコロ。似合うじゃねか。デンデ、ありがとな!」
 タイミングを見計らったように、悟空が突然登場し、ピッコロは気がつく。そして思わずデンデを睨みつけてしまった。
「ピッコロさんが絶対行かないだろうからって、悟空さんと共同作戦を建てたのです。パンさんの来訪はいい援護射撃になりましたね」
 可愛らしいデンデはどこに行ったのか。
 こんな風な作戦を立てることができるなど、ピッコロは唖然とするしかなかった。
「おっと、やべぇぞ。遅刻だ!ピッコロ!行くぞ!」
 有無を言わさずピッコロの肩に手を置き、悟空は瞬間移動を使う。
 一瞬で二人の姿が消え、デンデはほっと胸をなでおろした。
 うまくいくと保証できない作戦だった。
「神様。すごい。あのピッコロ。行かせた」
「はは。行かせたっていうよりも悟空さんが無理やり連れていったというのが正しいでしょうけど」

 悟飯にもピッコロにも幸せになってほしい。
 デンデはそう思い、今日の授賞式を二人が楽しむことを願った。


「次はハーバル生物学賞を受賞した孫悟飯教授です」
 二人の受賞者の発表、メダルの授与が終わり、悟飯の番になる。研究内容はスクリーン上で簡潔にまとめられたものが流れる仕組みになっていた。
 悟飯はその間、笑顔を保っているだけでいい。

 余裕があるので、会場を見渡す。チチ、ビーデル、パン、悟天の姿を見つけて、手を振りそうになり、慌てて下ろした。悟空の姿が見当たらず、落胆を覚える。
 発表が終わり、いよいよメダルが授与される時がやってきた。
 悟飯はもう一度会場に目をやった。
 すると、悟空の姿が見えた。そしてその隣には長身の男の姿がある。男は深く帽子をかぶり、フォーマルなスーツを着こなしていた。
 ――ありえない。そんなわけがない。
 男が顔を上げた。鋭い視線が悟飯を突く。
「ピッコロさん!」
 気が付くと、悟飯は記者の間をすり抜け、彼の元へ走っていた。
「悟飯!お前!」
「ピッコロさん、来てくれたんですね!僕、夢みたいです!」
 来てくれる、しかもわざわざ下界の服を着てくれている。
 涙が込み上げてきて、悟飯はそれを流さないように堪えた。
「悟飯ちゃん!何やってんだべ。メダル、メダルの受賞がまだだべ!」
「あちゃー」
 世界一の研究者の両親は息子が晴れの舞台で犯した失態に、それぞれのリアクションをとる。
「悟飯。だから、お前は俺に来てほしくなかったんだな。俺は今ものすごく後悔してるぞ」
「すみません」
 苦虫をつぶした顔をされ、悟飯は深く反省して、頭を垂れる。
 そこで唖然としていた司会者が我に返り、マイクで悟飯を呼び出した。
「孫悟飯さん。壇上に戻ってきてもらいますか?メダルの授与を行います」
「はい!」
 元気よく返事をして、悟飯は再び壇上に戻った。

 既に45歳を超えている。
 落ち着きがある立派な大人の年齢だ。
 大人というか既に壮年の域を達して、中年期に差し掛かっている。
 しかしピッコロが唯一心を許した相手は、まだまだ手のかかる子供のようだった。
 チチにどやされることを想像しつつ、ピッコロは悟飯の晴れ舞台を見守った。

(完)


posted by ありま at 12:38| Comment(0) | 魔師弟 その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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