2014年11月18日

☆様とのコラボ作品「偉い学者さんとスーツの『男』」3/4



悟飯45歳のお話です。
飯ビー、恋愛要素を含まない魔師弟好きの方には痛い話なので、
読まないでくださいませ。
またGTは全く踏まえておりません。(見たこともないので)

興味ある方は下記からどうぞ。

「何か御用でしょうか?孫教授」
 翌日の午後、悟飯はジェラを研究室に呼び出した。
 ジェラは悟飯のハーバル賞受賞に関して、廊下ですれ違った時に祝いの言葉を投げるにとどまっていた。
 彼から祝福されることなど期待していない。むしろ祝福されると気分が悪くなる。
 今日、彼を呼び出したのは理由があった。
「ジェラさん。お呼び立てしてすみません。先日旅行先から戻ってきた生徒から美味しい珈琲をいただいたのです。一緒にお茶などいかがだと思いまして」
「……珈琲ですか?」
「はい。今入れますから、そこで座ってお待ちください」
 悟飯からお茶に誘われることなど思いもしなかっただろう。ジェラは顔を引きつらせている。しかし、去るつもりはないようだ。深緑の落ち着いた色のソファに腰掛け、落ち着かない様子できょろきょろと研究室に視線を向ける。
「どうぞ」
 ペーパードリップで淹れた珈琲を、白いマグカップに注ぎ、ジェラの目の前に置く。自分の分も作り、彼の向かいの椅子に座った。
 警戒しているのか、悟飯が珈琲を飲むまで、ジェラは口をつけようとしなかった。
 その様子に心の中で苦笑しながら、本当の要件を伝えるタイミングを計る。
「美味しいですね」
 しばらくして、ジェラがぼそっと感想を漏らした。その表情には安堵が窺われる。
「そうですか?よかった。クッキーもいかかですか?」
 机の上に置いてあるクッキー缶を取ろうと悟飯は腰を上げる。そして今がいい機会だと、缶と一緒に写真立てを掴む。
「どうぞ。クッキーです」
「あ、ありがとうございます」
 珈琲が普通だったので、クッキーも大丈夫だろうとかなりリラックスしたジェラはクッキー缶を受け取る。
 そこで悟飯はすかさず写真を見せた。
「ジェラさん。これ。僕の家族の写真なんですよ。この子が僕の娘です。可愛いでしょ?母親似なんですけど」
 パンの写真を指差し、悟飯は微笑む。
「昨日、娘が来ましてね。いえ、娘は数日ごとに私に服を届けたりして大学の方へ来るんですけど、どうやら怪しい男が彼女を見ているようなのです。大学の警備は厳しいからそんな怪しい男がいないと言ったんですけど。ジェラさんは、そんな怪しい男を見たことがありますか?」
「!」
 ぱりっとクッキーが割れた音がした。口に入らず、二つに割れたクッキーがテーブルの上に落ちる。
「あれ、ジェラさん。大丈夫ですか?」
 ジェラの顔色は真っ青だった。
「娘には今度怪しい男をみたら警察に通報しなさいと伝えてあります。だから大丈夫だと思うのですけど」
「……失礼します」
 ゆらりと、ジェラは立ち上がる。
「ジェラさん、大丈夫ですか?」
「はい」
 少ない前髪が濡れ、額にぴったりと張り付いていた。部屋に入ってきた元気はどこに行ったのか、俯きがちで背中は丸く縮こまっている。 
 これ以上追い打ちをかける必要はない。
 これからは娘のことを執拗に見つめたり、そのことで絡んだりしてこないだろう。
 そう思い、悟飯は黙って部屋を去るジェラの背中を見送った。


 それから予想通り ジェラが悟飯に絡んでくることはなかった。他の教員も同様だった。だが、人というのは難しい生き物で、絡んでくる輩はいなくなったが、今度は大学で孤立し始めた。
 ハーバル賞を受賞していい気になっている、そんな風潮が教員間で起こっているようだった。
 ――馬鹿ばかしい。
 研究をしたいだけなのに、このような人間関係に巻き込まれるのはご免だった。
 悟飯は辞表届を出す日時を早めることを決め、その日を数えながら日々を過ごす。
 同時に大学を辞めた後に、研究施設を提供するところを探した。


 ★
 そして一週間後の朝。
 身支度を整えたビーデル、パンとチチが真剣な顔をして悟飯を取り囲んだ。 
 悟空と悟天はいつの間にか逃げたのか、その場にはいない。
「悟飯くん。今日は買い物に付き合ってもらうわよ」
 ビーデルのその一言で、悟飯は街に買い物に連れていかれることになった。
 買い物の目的は一つ――迫るハーバル賞受賞式に来ていく服を買いに行くことだった。
 悟飯の晴れ舞台、世界に放映される授賞式。
 服を新調しなければと、チチが言いだし、ビーデルがそれに乗った形だ。
「ママもテレビに映るわよ。だから、ママも何か新調した方がいいと思うわ」
「それならパンも世界一の研究者の娘として、映るかもしないでしょ?」
「だったら、おばあちゃんも世界一の研究者の母として映るかもしれない。じゃあ、みんなで新しいドレス買いましょう」
 女性三世代、主役をほっぽり出し、ドレスを選び始めた。
 悟飯は大きなため息をつくと、椅子に深く座りこむ。
「孫悟飯さんですよね。すごいですね。ハーバル賞!今日は受賞式のための服装をお選びですか?」
 マスメディアの影響は大きいらしい。また女性陣の話し声が聞こえたのか男性の店員が近づいてきた。
「……ありがとうございます。はい。服を選びにきたのですが、どんな服がいいのでしょうか?」
 ぼうっとしても時間の無駄だと思い、自分の分はサッサと決めようと覚悟を決める。
「受賞式ですね。当日はテレビカメラも入りますから、映えるようなものがいいですね!」
 店員は待ってましたと笑顔を作り、悟飯を男性用の服が掛かっている場所へ招く。
「色はどのようなものがいいですか?」
「……緑、もしくは紫」
 悟飯はとっさにそう答える。
「緑か紫ですね!」
 そう言い、何着がスーツを取り出してきた。
 そのうちの一つに目が奪われた。
「あ、この色。ピッコロさんの色ね!」
 いつの間に来たのか、パンが傍に立っていた。
「パン!」
「パパ。そんな大声出さないでよ。この色、ピッコロさんの色だよね。パパ、もしかしてこれを選ぼうとしてる?だめだからね!すっごく目立っちゃうから!あ、これはどう?ほら、ピッコロさんの道着と同じ紫色よ」
 結局娘に押し切られ、悟飯のスーツは京紫色に決まる。
「ねぇ、パパ。ピッコロさんも授賞式に呼んだの?」
「……呼んでないよ」
「どうして?おじいちゃんから聞いたわよ。パパにとってピッコロさんはおじいちゃんよりも大事な存在なんだって」
「!お父さんがそんなこと」
 そんな風に思わせていたのかと、悟飯は悟空に申し訳ない気持ちになる。
「おじいちゃん、ピッコロさんはパパにとってかけがえのない存在だって言ってたの。だから、受賞式には呼ばないと。パパの晴れ舞台じゃない!」
「……忙しいから駄目だよ」
「忙しい?たった一日。しかも数時間のことじゃないの」
「忙しいんだ。ピッコロさんに迷惑かけたくないから。パン。この話はこれで終わり。ところで、お前のドレスは決まったのか?」
「もちろんよ。パパ、見たい?」
「うん」
「見せてあげるわ」
 歳はとうに二十歳を超えている。しかし、子供っぽさは抜け切れていなかった。それとも女の子はこういうものなのか。
 パンはパタパタと走っていき、試着室へ飛び込む。
 こうして、パンをはじめ、ビーデル、チチのファッションショーにつきあい、悟飯の一日は過ぎていった、
 
 ★

「よお!」
 その頃、神殿には珍しい客が訪れていた。
「久しぶり。おお、デンデも。大きくなったな」
「悟空さん。お久しぶりです!」
「悟空。よく来た」
「ミスターポポも。元気そうだな」
 悟空が神殿に来たのは数年ぶりだった。
 瞬間移動で行こうと思えば、どこにでも行ける。しかし、悟空は常に一人で修行をしており、用事もないのに友人や神殿へちょくちょく遊びにいくタイプではなかった。
「何の用だ?」
「ああ、おめぇ。悟飯のへーベル賞受賞のこと知ってぇか?」
「ハーバル賞だ」
「あ、そうだった。ハーバル。なんでもすげぇ賞らしくて、世界一の研究者ってことらしい」
「そうだな」
「なあんだ。知ってんか。つまんねぇな。ああ、そっか。神殿にいたら全部わかっか」
「それをわざわざ伝えに来たのか?」
「まあな。あと授賞式ってのがあるらしい。大勢の前で世界一ってぇことを祝ってもらうんだ」
 悟空はそこで言葉を切り、真剣な表情をする。
 ピッコロは何を言われるのかと、ごくりと唾を飲んだ。
「悟飯はさぁ。おめぇにはいわねーだろうけど、その授賞式に出てほしいと思うぜ。おめぇに見せてぇと思う」
「……」
 悟飯から授賞式について、聞かされたことはない。
 遠慮しているのだろう、と想像する。
 それとも、出てほしくないのかと。
 悟空から言われたことと、本人の希望が一致するとは限らない。
 現に聞かされていないのだ。
「出てくれよな。式は一週間後。場所は東の街だ」
「悟空!」
 言いたいことだけ言うと悟空は指を額に当て、ひゅっといなくなった。
 いつも唐突にあらわれ、消える。
 本当に自由な男だと、ピッコロは少し彼に憧れを抱く。
「ピッコロさん。授賞式。一週間後ですね」
 デンデは友人の晴れ舞台にウキウキしているのか、明るい口調でそう言う。
「ああ」
 しかしピッコロはどうしたものかと、迷っていた。


 ★

 ピッコロを受賞式に誘わない。
 忙しいから、迷惑をかけるから。
 そんな理由を建前に使った。
 しかし、本当の理由は別にあった。

 一年に一度しか会えない。会うと全てを忘れ、ピッコロだけのことしか考えられなくなる。そんな自分をビーデルや家族に見せるのが怖かった。
 『偉い学者さんになる』その夢が叶う瞬間、それを誰よりもピッコロに見てほしい。
 壇上でハーバル賞のメダルを首に掛けられる、ピッコロがそれを見てくれたら、夢のようだった。
 誘えば来てくれる。 
 でも我慢できるのか。
 弟子として、疑われないように振る舞えるのか、その胸に飛び込んでしまうかもしれない。
 そんな恐れがあって、悟飯はピッコロを誘えないでいた。

 眠れなくて、体の方向を変える。隣には誰もいない。服を選んだ後、ビーデルはミスターサタンの家に行った。魔人ブウが同居しているとは言え、たまには実家に戻り、泊ってくることがあった。パンはすでに成人しているし、チチは健在だ。
 誰にも咎められることなく、実家に戻ることが出来ていた。

 こんな日にビーデルが実家に戻っていたことに、悟飯は安堵していた。煩悩にとらわれ、ピッコロへの想いで心がいっぱいになる。

 ――ごめんなさい。

 誰に対してなのか。
 そう思いながらも、悟飯は煩悩を昇華する行為をやめられなかった。


posted by ありま at 12:37| Comment(0) | 魔師弟 その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。