2014年11月18日

☆様とのコラボ作品「偉い学者さんとスーツの『男』」2/4

悟飯45歳のお話です。
飯ビー、恋愛要素を含まない魔師弟好きの方には痛い話なので、
読まないでくださいませ。
またGTは全く踏まえておりません。(見たこともないので)

興味ある方は下記からどうぞ。

講義が始まる一時間前に悟飯は大学に戻った。
 研究室に入ると、すぐに喧しい着信音が聞こえる。最近流行りの音楽と言われたが、悟飯は好きではなかった。だが、電話に気づかないことに怒った娘が選んだ着信音なので、変えるわけにはいかない。
 電話に慌てて出ると、それは妻のビーデルだった。 
 神殿には持っていきたくないと、携帯電話は研究室に置きっぱなしだった。
 もしかして、何度も電話をしたのかな――少し罪悪感に駆られ、悟飯はビーデルの言葉に耳を傾ける。
「昨日、神殿に泊まったでしょ。もうどこにでも携帯電話を持っていってって言ってるのに。今度ピッコロさんにも持ってもらおうかしら」
「と、とんでもないよ。ピッコロさんが携帯電話なんか持ったら、パンとか悟天がしょっちゅう連絡して邪魔するだけだから!」
「それもそうよね。だったらかあきらめるけど。悟飯くん。次から絶対にどこにでも持って行ってよね。今は平和だからいいけど、ちょっと心配しちゃうから」
「うん。わかった」
 ビーデルは優しい妻だった。ずっと変わらない愛情を自分に抱いてくれる。
 それを思い知らされるたびに、悟飯の心に罪悪感、背徳感が込み上げてきて、胸が苦しくなった。
「あ、いけない!重要なこと伝え忘れるところだったわ!悟飯くん、驚かないでね!悟飯くんが今年のハーバル生物学賞を受賞したのよ!悟飯くんの携帯が繋がらないし、研究室にもいないから大学から家にかかってきたのよ。すごいわね!さすが悟飯くん!授賞式は二週間後って言ってたわ。これからますます忙しくなりそうね!」
 ――ハーバル賞……。
 すべての研究者が夢みる賞だった。
 まさか自分が受賞できるなんて、悟飯は驚きで頭がいっぱいでその後に続けられるビーデルの言葉が頭に入ってこなかった。
「悟飯くん、悟飯くーん!もう。今日は家でお祝いするから絶対に帰ってきてね」
 最後の言葉だけがやっと耳に届き、悟飯はうん、と返事をした。
「うーん。心配だわ。パンを迎えに行かせるわ。悟飯くん。本当おめでとう!よかったわね!」
 ビーデルはそう締めくくり、電話を切った。
「……ハーバル賞!」
 全く実感が湧かない栄誉な賞、でも大学から連絡があったということは嘘のわけがなかった。じわりじわりと喜びが生まれる。そして、受賞した研究内容が今年発表した「空気中の水素と酵素を光エネルギーで水に変える植物の生成」だと思い当たる。
 砂漠はもちろん、太陽が当たる場所であれば宇宙のどこでも植物が育ち、人々に水を提供することができる可能性があるのだ。
 ハーバル賞を受賞したとなれば、悟飯自身に価値が生まれる。そうなると、研究を援助してくれる団体が見つかり、このように大学に在職する必要なくなり、自由に研究が出来る。
 この技術をアジッサの木に適応させれば、万が一異常気象があっても枯れない木にすることも可能かもしれない。
 夢は広がり、喜びで胸がいっぱいになる。
「ピッコロさん!」
 聞こえるわけがない。でも聞いてほしい、と悟飯は心の底から愛する人の名を呼ぶ。
『悟飯!』
 すぐに脳裏に声が返ってきて、心が躍る。
『昨日遠見の術を使って見ていればもっと早く分かっていたのだが……。これで、お前の夢は本当に叶ったな』
――偉い学者さんになる。悟飯が小さい時から言っていた言葉だ。学者には十年以上も前からなっていた。『偉い』という要素がこれに加わり、本当の意味で確かに偉い学者になったと言える。
「僕の夢。はい。僕の夢、これで完璧に叶いました。僕は大学を辞めるつもりです。ハーバル賞を受賞したのであれば、僕を支援してくれる団体も現れるはずですから」
『そうか、よかったな』
「はい!」

 そうして、ピッコロとの交信を終え、一息ついたところで、悟飯の騒がしい一日が始まった。
 学長自らが悟飯の研究室を現れ、ハーバル賞受賞を称えた。
 その後も他の教員たちが次々と研究室に訪れる。
 ニュースでもこれは流れたらしく、講義を始めようとすると、学生たちにもお祝いの言葉をかけられた。
 それまで、やっかんでいた教員たちは悟飯とすれ違うと苦々しい顔、もしくは作り笑いを浮かべて祝っていく。

 これで、誰にも文句を言わせない。
 そんな立場を得たわけだが、悟飯が大学を辞める決意は変わらなかった。
 しかしながら、受賞直後に辞めるのは心象がよくない。そう思い、辞表を出すのは三か月後にした。辞表から二か月は在職するのが規則だった。したがって結局大学を辞められるのは五か月後になる。
 それでもこの檻からの逃れられる日時が決まっただけでも、気持ちが軽くなった。

 コンコン。
 窓を軽くたたかれる音がして、顔を上げた。
「パン!」
 そこにいたのは娘のパンで、慌てて窓を開ける。
「パパ!やっぱり時間を忘れていたのね」
 窓から入ってきたパンは眉を吊り上げ、怒った時のビーデルそっくりの表情をしていた。
「ごめん。だけど、パン。いつも言ってるだろう。舞空術なんてそう簡単に使うもんじゃないって」
「そうだけど。もう日も暮れてるし、見てる人なんていないわよ。パパの部屋って廊下の一番端っこじゃないの。歩くと面倒でしょ。だから。あと、なんか廊下を通ると変な人が見てたりするし」
「変な人?」
「うん。頭が禿げてるおじさん。好きじゃないのよね」
「……ジェラさんか」
「ジェラさん?」
「うん。パパの同僚なんだよ。今度言っておくから。お前はお母さんそっくりなんだから、間違うなんてどうかしているけど」
「間違う?」
「なんでもない。さあ、戻ろうか」
「うん」
 三日ぶりの自宅だった。
 運転するのはパンだ。祖父のミスターサタンから贈られた二人乗りの小型ジェット機に乗りこみ自宅へ急ぐ。
 なんとなく妙なプライドが邪魔をして、悟飯の愛車は自分で購入したエアカーだ。もう十年も乗っている。自宅から街に入るまでは人影もほとんどなく山ばかりなので、舞空術を使っているが、街に近づくとカプセルに詰めたエアカーを出して、乗るようにしている。
 小型ジェットと言えでも、超スピードの舞空術にはかなわない。街を過ぎると、お互いにわかっているので、ジェット機から降り、カプセルに戻す。
 パンの舞空術は、すでに四歳の時点で地球人レベルではなかった。さすが父親に日々鍛えられているトランクスに張るまでいかないが、悟天とはいい勝負をするくらいだった。
むしゃくしゃするとミスターサタンの道場でその腕前を披露しているが、祖父の手前、本気を出すことができず、ストレスが余計たまるというジレンマに陥っていた。
 今年で二十三歳になるが、結婚はしていない。
 本人いわく、相応しい相手がいないらしい。夫候補だったトランクスはすでに結婚しており、悟空は「お前ぇたちが結婚したら最強戦士が誕生したかもしれないのになぁ」と残念がっていた。

『悟飯!ハーバル賞おめでとう!』
 そんな垂れ幕が張られ、円卓には御馳走が並べられていた。
 人数が増え、全員揃うときは実家ではなく、サイズの大きい悟飯の家で食事をとるようにしていた。
 ミスターサタンの道場に通うことが多くなったビーデルに代わり、チチが孫家の食事を全般的に担当していた。しかし今日はビーデルも手伝ったらしく、中華ではないスパゲティ、ハンバ―グ、ピザなども並んでいた。
「悟飯。すげぇ賞を受賞したな。おらは悟飯ならいつかやってくれると信じていたべ」
 悟飯に食事を取り分けながら、チチが感慨深く話す。その声は涙交じりで、悟飯は別のテーブルに置いてあるテッシュボックスから数枚のテッシュを取ると、渡す。チチはそれで鼻を噛むと泣き出してしまった。
「お母さん」
 台所から出てきたビーデルはすかさずハンカチをチチに差しだし、その肩に手を置く。それをギュッとつかみ、チチは嫁を涙目で見つめる。
「ビーデル。お前ぇも頑張ったな。悟飯が大学に泊まりっぱなしでさびしかっただろ」
「ううん、私は大丈夫。一番頑張ったのは悟飯くんなんです」
 ビーデルはそう言って優しく微笑みを返す。
 多少どころかかなり親離れができていないチチに、ビーデルは出会った頃意外に、歯向かったことはなかった。
 悟飯の隣に座ったチチの横でビーデルは微笑みを保ったまま、さめざめと泣く義理の母親の話に相槌を打つ。
「お兄ちゃん。やったね。ハーバル賞なんてすごいよ。オレ、すっごく鼻が高い。おめでとう!」 
 そんな二人のやりとりを見ながら椅子に座り直すと、右隣の悟天が声をかけてきた。
 今年三十五歳になる悟天はまだ結婚していない。が、カプセルコーポレーションの専務職に就いており、トランクスの片腕として活躍しているようだった。
「ありがとう。今日は仕事、大丈夫だったか?お前も忙しいみたいじゃないか」
「ううん。今日は特別だからね。ブルマさんもこんな日に帰らなくてどうするのよ、と言ってたし」
「あ、ブルマさん。ブルマさん。元気?」
「うん。元気。今度神龍を呼び出して、若返らせてもらうって息巻いてた」
「そうなんだ。ブルマさんらしい。トランクスくんも元気?ブラちゃんは?」
「うん。みんな元気だよ」
「そうか。それならよかった。あ、そういえばお父さんの姿見えないけど」
「あ、お父さん。昼間オレが呼びに行ったら戻ってくるって言ってたんだけど、まだ来ないから。さっきパンが呼びにいったよ」
「そうか。お父さん、今日も修行してるんだな」
「うん。お父さん修行好きだからね。そういえばベジータさんとも最近は一緒に修業しているみたいだよ」
「え?ベジータさんと?」
「うん」
 二人とも暇――仕事をしていないという点では共通していたが、お互いにお互いの修行をしており、共にいることはほとんどなかった。年齢的には六十歳をとっくに超えている。そろそろ心境の変化でもあったのかと悟飯は思う。
「!」
 そんなことを思っていると空気が揺れる感触がして、「わりぃ、わりぃ。遅くなった」という悟空の声が部屋に響いた。
「お父さん!」
「悟空さ!またどこに行ったんだべ。悟天を迎えにいかせたのに、帰ってこねぇで。パンちゃんまで迎えに行かせることになっちまったじゃねーか」
「わりぃ、わりぃ。いやー、つい夢中になってよ」
 どのような修行をしていたのか、息が少しあがり、道着に土がついている。
「悟空さ、その恰好で飯さ、食うつもりか。シャワー浴びて着替えてきてけろ!」
「え、おら、腹減っちまったぞ」
「早く来ないから悪いべ。さっ、早くシャワー浴びてけろ!」
 チチの剣幕には叶わない。悟空はおらの分残しておいてくれよと、大人しく浴室に向かう。悟飯の家を隣に立てる際に、浴室も実家につけてもらった。前のように家の外のドラム缶でお風呂に入ることはなくなっていた。
「パン。ごくろうさま」
 着替えを用意してくるというチチを見送り、ビーデルは娘に労い言葉をかける。
「おじちゃん、やっぱり凄かったわ。でも、この世界におじいちゃんみたいな人はいないのよね」
 悟空を尊敬しているパン。結婚しないのもそのせいもあるようだった。
 父として男として、悟空のことを尊敬している。しかし可愛い娘の夫としては悟空のようなタイプはどうなのか、と悟飯は戸惑う。ビーデルも同様らしく苦笑していた。

「おっし。食うぞ」
 サイヤ人の胃袋は限度を知らない。身を持って知っているビーデルは悟空が戻ってくる前に、新たな御馳走を円卓に並べていた。
 悟空はいただきます、と言うと食べ始める。
「うめぇ。これも食っちまっていいか?」
「はい。どうぞ」
 悟飯のためにとチチが作った中華まんーー彼の目の前に置かれていたのだが、遅れてきた悟空はそんな事情を知らない。
 手を伸ばそうとしたところ、ぱしんと手を叩かれた。
「悟空さ。今日は何のお祝いかわかってるべか?」
「へ?悟飯のバーデルだか、へーデル賞のお祝いだろ?」
「分かってぇなら、ねぇんでさっきから、悟飯ちゃんにお祝いの言葉を言ってあげねぇ。悟飯ちゃんも待ってるんだ。悟空さの言葉を!」
「いや、そんな。いいから」
 四十五歳、四捨五入すれば五十歳になるのに、久々にちゃんづけで呼ばれて恥ずかしくなる。また父親のマイペースさは小さい時からわかっているので、期待など鼻からしておらず母親の怒りを鎮めるほうに回る。
「悟飯」
 悟空は箸を止めると、悟飯に向き直る。表情を引き締め、戦いに行くような真剣な表情だった。
「おら、そのバーベルだか、ハーベルだが知らねーが、世界一の学者に贈られる賞なんだろ?よくやったな。おめぇはすげぇよ。本当に」 
「お父さん……」
「そういや、パーティもあるんだろ?うめぇもんも食えそうだな」
 感動したところで、そういわれ、悟飯は一気に脱力した。
「悟空さ!」
 チチは今度こそ我慢ならないと夫を怒鳴りつけた 

 こうして賑やかに家族でお祝いをすませ、悟飯は部屋に戻る。片づけはビーデルとパンがしてくれるということだった。
「疲れているだろうから、先にシャワーでも浴びてゆっくりしてて」、とできた妻に言われ、悟飯は言葉通り、シャワーを浴びる。
 服を脱ぐ際に改めてピッコロに出してもらった服の快適さを感じた。本当なら毎日着ていきたいくらいだった。
 ――ピッコロさんはハーバル賞のこと昨日は知らなかったみたいだけど。偶然でもお祝いをもらったみたいで、嬉しいな。
「悟飯くん。着替え、ここに置いておくわね」
 浴室のドア越しからビーデルが声をかける。本当に気が付く妻だった。着替えを忘れたことに気が付いたが、また同じ服を着るつもりだった。
「これは明日洗濯するとして……あれ?この服」
「あ、えっと、」
「ピッコロさんにもらったの?」
 あたふたしている間にそう言われ、悟飯は嘘をつけなくなる。
「うん」
「なんだ。悟飯くん、本当はハーバル賞受賞したの知っていたんじゃないの。ピッコロさんからお祝いにもらったんでしょ?私がはじめに教えてあげたと思ったのに。なんか悔しい」
 ――違う。
 ビーデルは勘違いしていた。でも訂正がなぜかできなくて、悟飯は口ごもる。
「でもしょうがないものね。ピッコロさんだし」
 何も言わない悟飯にビーデルがそう結論づける。その声は少し湿気を帯びてるような気がした。
 

 パンが十歳のころから、悟飯とビーデルの寝室は再び一緒になった。
 しかし、セックスはしていない。そういう気持ちになれないのだ。悪いと思いながらも、悟飯はビーデルの隣でただ寝るだけだった。
 ビーデルは元からセックスに興味がないのか、それに不満を表わすことはなかった。また悟飯は夜遅くまで本を読んでることが多く、就寝時間が重ならなかったせいもあるかもしれない。

「悟飯くん。まだ寝ないの?」
 ベッドの傍の机で本を読んでいる悟飯に、家事を終わらせ寝間着に着替えたビーデルが声をかける。
 チチに贈られたワンピースのネグリジェが寝間着だった。長かった髪はミスターサタンの道場を手伝うようになってから、バッサリと切っている。
 十七歳の時のようにベリーショートではない。女性らしい線を残したボブカットで、邪魔にならないように襟足より上で切られている。
「……私は先に寝るわね。明日も道場行かないといけないから。悟飯くんも無理しないほうがいいわよ。ハーバル賞も受賞もできたし、そんなに頑張らなくてもいいからね」
「うん。ありがとう。これを読み終わったら寝るから。心配しないで」
「だったらいいけど。おやすみ」
「おやすみ」
 ビーデルは悟飯の邪魔をすることはなかった。結婚前の我儘が嘘だったように、悟飯を困らせることはなかった。それだけに、悟飯は自分の気持ちが彼女に向いていないことに罪悪感を覚えていた。
 家族として、パンの母親として、ビーデルのことを大切に思っている。
 人によれば、それも愛かもしれない。
 愛と思ってしまったほうが、罪悪感を覚えることは少なくなるだろう。
 でも、悟飯にはそう思えなかった。
 愛しているのはピッコロだけだった。


posted by ありま at 12:36| Comment(0) | 魔師弟 その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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