2014年09月22日

三岐蛇様とのコラボ作品『それはきっと願望。』

こんにちは。
ありま氷炎です。

ツイッターでお世話になっている三岐蛇様よりイラストをお借りして、魔師弟小説など書いてみました。
お借りしたイラストは下記。

eiux6kpnocA.jpg

三岐蛇様のサイト『BlueStars』(相互リンクもさせていただいてます)から『アルティ飯に追われるピッコロさん』のイラストをお借りしてます。
……イラストは可愛いコメディタッチなのに、小説はちょっぴりシリアスになってしまいました。





 それはきっと願望。
==
「ピッコロさん!俺から逃げられると思ってるんですか?」
 花束を持った悟飯が不敵な笑いを浮かべ、ピッコロの後を追っていた。
「貴方は俺の運命の人なんだ。だから付き合ってください」
 「らしくない」悟飯。
 でも目の前の男は確かに悟飯だった。
 鋭い瞳、強気な態度。放たれる強力な気。
 そう、あのブウとの戦いで見せた姿。それが今の悟飯だった。
 戦いでもないのに、変わってしまった弟子。
 そうなった原因は数日前にあった。

「悟飯。本気を出すんだ!」
 悟空の全身から金色の気が放たれている。髪は同じく金色に染まり、その青い瞳に苛立ちの色を湛えていた。
 その正面にふわりと浮いているのは悟飯。
 こちらは黒い髪、黒い瞳のままで、超サイヤ人2になった父親を静かに見ていた。
「……やはりやめましょう。僕は戦うのが好きじゃない」
 魔人ブウとの戦いが終わり、悟空はパオズ山に戻って来ていた。地球育ちの戦闘民族、そして「働く」という概念がない父親は体と暇を持て余し、老界王神によって力を解放された長男に目を付けた。
 勉強を理由に断っていた悟飯だが、再三に渡る父親の頼みでしかたなく、紫色の道着に袖を通した。
 あの戦いを通し、老界王神によって極限まで高められた力。しかし悟飯は戦う必要もないのに、あの状態になるのが好きではなかった。有り余る力、解放感。気持ちはすこぶるよくなる。
 セルと戦った子供頃と異なり、力のコントロールもできた。だが、高揚感から「らしく」なくなる自分が嫌いだった。
 「おめぇ。まさか、オラがやられちまうって思ってんのか?確かに限界まで力を高めたおめぇはつえぇ。だがな、戦いはそれだけじゃねぇんだ」
 いつまでたっても気を高めようとしない悟飯に痺れを切らして、悟空が先制攻撃を仕掛けた。
 超化すらしていない悟飯は反応が遅れた。拳をまともに顔面にくらい、地面に叩きつけられる。
「げ、あたちまった!悟飯!」
 攻撃をよけると思って仕掛けた父親。息子が避けるどころか、防御もしなかったことに驚き、慌てて降下した。
「悟、悟飯!でぇじょうぶか?」
 地面に伏した悟飯を抱きかかえて、呼びかける。 
 しかし、目を覚ますことはなかった。


「悟空。お前って奴はまったく!」
 神殿に突然現れた悟空。その腕に抱きかかえられている存在を見て、ピッコロは盛大な雷を落とした。
「いやあ。まさか当たるとは思ってもみなかったんだ」
 悟空は自分よりも父親らしい元神様、元大魔王に怒られ、へへっと困ったような笑みを浮かべる。そんな男の様子を横目で見て、ピッコロは溜息をつく。
 神殿に運び込まれた悟飯に大きな外傷は見当たらない。
 だが、目を覚まさないということだったので、悟空がデンデを頼り運んで来たようだった。
「チチがさあ。連れて行けっていうもんだから。おらはでぇじょうぶって言ったんだけどな」
 散々チチに説教されたようだった。その言葉に力はなかった。
「デンデ。悟飯の調子はどうだ。どこか悪いのか?」
 ピッコロはチチの怒りを理解しつつ、悟飯へ治療を行っている同胞に尋ねる。
「……わかりません。傷はすべて癒しましたが……」
 デンデは同胞の問いに首を横に振った。
「下界の医者に見せた方がいいかもしれんな」
 神様とて万能ではない。何か特別な病気かもしれないと、ピッコロがそう言った時だった。
「…う…ん?」
 ベッドの上から微かな吐息が洩れる。
「悟飯!」
「悟飯さん!」
 気がついたのかと、心配していた面々が一斉にその名を呼んだ。
 黒髪の青年は目を開けると、焦点の定まっていない視線を皆に向ける。悟空、デンデと順番に見て行き、ピッコロまで来た時、その瞳が急に輝いた。
「ピッコロさん!」
 勢いよく体を起こした悟飯は、ただピッコロだけを見つめていた。
「な、なんだ。悟飯?」
 その視線の強さ、勢いに多少引きながら師匠は弟子に問いかける。
「ピッコロさん。貴方は俺の運命の人だ。付き合って下さい」
「?!」
 悟飯から紡がれた、まるで映画の中の台詞。ピッコロどころか悟空やデンデも映画など見たことないが、その非日常的な言葉に異常を感じる。
「おい。悟飯。でぇじょうぶか?頭打っておかしくなったんじゃ?」
 息子のことを心配し、悟空はその頭に触れようとした。
「!」
 ぱしん、と綺麗な音が部屋に響く。
「悟飯?」
 それは悟飯が悟空の手を払いのける音で、父親は多少なりショックを受けた。
「あんた、誰だ?」
 その後に止めを刺すようなことを言われ、能天気が売りの悟空も言葉を失った。
「悟飯。悪ふざけがすぎるぞ」
 自分のことを「ピッコロさん」と呼んだ悟飯。
 悪い冗談でも父親にしかけているのかと、師匠として弟子に苦言をもらす。
「悪ふざけ?なんのことですか?俺はあの人を知らない。俺が思い出せるのは貴方のことだけだ」
「悟、飯?」
 ショックから立ち直って、またショック。
 悟空はただ息子を見つめるだけだ。
「……頭を打ったせいか?悟飯、俺の何を覚えている?」
「俺は、貴方から戦い方を教わった。貴方は俺の全てだ」
 

「どうすっか」
 孫家の家長は腕を組むと、みんなの顔を見渡した。
 記憶がなく、人格が変わったとしても悟飯には違いない。
 だから、悟空はとりあえず彼を家に連れて帰った。しかし彼が孫家にもたらしたものは、嵐だった。
 ピッコロの元にちょくちょく通うことは前からだったが、今ではストーカーの域を超えていた。常にピッコロを追っかけ、水しか飲まない彼のために、美味しい水を贈ろうと街から一番高い水を強行に奪う。後始末はチチに言われ悟空がした。ブルマに頼み込みに迷惑料を含め払ってもらった。
 そして悟飯が記憶を失って数日後、孫家では家族会議が開かれることになった。
 家族会議のメンバーは、悟空、チチ、悟天、そしてピッコロだ。悟飯はピッコロの好物である北エリアの水を取りに行っている。パワー全開の悟飯だ。ものの10分で戻ってくるに違いないが、その間に話を進めるつもりだった。
「あんな悟飯ちゃんは、悟飯ちゃんじゃねー」
 楽観的な悟空に対して、泣きながらそう言ったのはチチだ。どうやら何か頼み事をしたら、じろりと睨まれ「自分でしろ」と返されたらしい。
「うん。僕は魔人ブウじゃないのに、うすのろなんて言う兄ちゃんは兄ちゃんじゃない!」
 その隣で強く頷いたのは悟天だ。昨日悟飯と鬼ごっこしたところ、なかなか捕まえきれない悟天を「うすのろ」扱いしたらしい。
「そうか。おめぇたちがそう言うんだったら、元に戻す方法を考えたほうがいいよな」
 あくまでもマイペース。働かない家主はやっと少し深刻な表情を見せた。
「ピッコロはどう思う?」
 悟空にそう聞かれ、ピッコロは答えることを一瞬躊躇する。が、一同の視線を受けて口に出した。
「元に戻す方法……。ああなった原因は悟空の攻撃による頭部への刺激だと思う。だからもう一度刺激与えれば元に戻る可能性が高い」
「刺激?!悟飯ちゃんにもう一度刺激を与えるってことか?そんな危ないこと。そうだドラゴンボールは?」
「ブウの記憶を消すための使ったばっかりで、使えねぇ」
「そんなぁ。だったら兄ちゃんを攻撃するしかないの?」
 悟天はきゅっと、側にいる悟空の道着を掴む。
「心配すんな。悟天。悟飯は本気になればおらよりも強いかもしれねぇんだぞ。でぇじょうぶだ」
「お父さん……」
 悟空は不安がる悟天の頭を撫でた。
「うん。そうだべな。悟飯ちゃんは強い子だべ。でぃじょうぶに違いねぇ」
 以前は修行をさせるのが嫌だった。しかし、悟飯が修行し強くなったおかげで地球が救われたこともあった。こんなことで悟飯が死ぬわけがないとチチは自分を安心させるために、頷く。
 そんな妻の肩に悟空は手を優しく載せ、微笑む。そして立ち上がった。
「ピッコロ。こうなると早いうちがいい。お前が油断させている間に俺が気を放つ」
「悟空。俺がやる。方法を伝えたのは俺だ。俺が責任を持つ」
「そうか……。悪りぃな」
 修行ではなく、本気で息子に攻撃を仕掛けるのは悟空と言えでも気が引けていた。

「ピッコロさーん」
 そう結論が出た直後、タイミングよく悟飯が戻ってきたようだ。
 ピッコロは寄りかかっていた壁から体を起こし、悟飯の元へと向かう。
「悟飯。少し俺に付き合え」
「ピッコロさん!」
 初めて誘われたと、記憶を失った悟飯は喜びで顔を綻ばせた。
 そんな彼に多少罪悪感を覚えつつも、ピッコロはパオズ山から飛び立ち、人気がない場所へ向かった。
「ピッコロさん。どこに行くんですか?」
 隣に並んで飛びながら悟飯は辺りを見下ろす。
「荒野に行く。覚えているか?」
「荒野。貴方が俺に修行を付けてくれたところですね!」
 どういう記憶の失い方をしているのか、ピッコロを始め誰にもわからなかった。悟飯はピッコロとの思い出はなんでも覚えているようだった。
「あ、ちょっと待って下さい」
 町を素通りして、荒野を向かおうとしていたピッコロを呼びとめ、悟飯は不意に降下した。
「おい、悟飯。俺は水などいらんからな。大体お前は北エリアから水を運んできたんだろうが」
「水じゃありません。別のものです」
「悟飯!」
 するすると降りて行く悟飯の後を、ピッコロは追った。
 また何かを勝手に盗む気かと気が気じゃなかった。
「はい。ピッコロさん」
 お金という概念を思い出したのか、悟飯は料金を支払ってあるものを買ってきた。
 それは真っ赤な薔薇の花束。
「俺の愛のしるしです」
 悟飯はそう言いながらピッコロに花束を渡す。
「!」
 反射的に受け取ってしまい、ピッコロは眩暈を覚えた。
 恋愛などわからない。しかし、神の記憶から、男が女に花束を渡す場面、意味に思い至る。
「……悟飯。何度も言うが、俺は女ではない。まあ。男という言い方も正しくはないが、けして花など貰う立場ではないぞ」
 今の悟飯に話しても無駄だとわかっているが、ピッコロはこんこんと諭す。
「どうしてですか?俺の愛が受け取れないんですか?小さい時から貴方しか見ていなかったのに」
 愛の告白。
 ピッコロはどうしていいか分からず、頭を抱えた。
 こんなに悩むことなど、初めての経験だった。
「ピッコロさん。俺の愛を受け取ってください。嫌だというなら、無理やりにでも!」
 殺気、それに近い気が悟飯から放たれる。ピッコロは我に返ると花束を投げ出し、空に逃げた。
「逃がしません」
 悟飯は地面に落ちた花束をゆっくりと拾い上げると、ピッコロを追いかけた。
 

「悟飯。すまん。やはりこの状態はおかしい」
 彼、らしくない。
 記憶喪失。しかもおかしな失い方。ピッコロ対しても何かゆがんだ感情を抱いている。
 元に戻すしかない、とピッコロは技を繰り出すため、指を額に当てる。
 ショック療法しかないのだ。
 他に方法はない。
 ピッコロは自分に言い聞かせる。
「ピッコロさん!」
 花束を手に悟飯が迫っていた。
(だめだ。打てない)
 油断している今なら確実だった。しかし、無防備な弟子に技を繰り出すことなどできなかった。
「捕まえた。ピッコロさん。もう逃がしませんから」
 抵抗しなくなったピッコロの前に回り込み、悟飯はにっこりと笑う。
 記憶を失った彼の笑みはすこし邪悪なものだった。照れたような元の彼の笑みを思い出す。
「俺は貴方を愛してます。俺だけのものになってください」
「わりぃな、悟飯!」
 その瞬間、悟空の声がした。
「はっつ!」
 ピッコロを抱きしめようとした悟飯に渾身を込めた気が放たれた。
「悟飯!」
 気をまともにくらい、彼は地面に急降下する。
 悟空を責めることができない。気が高まった悟飯を感じ、瞬間移動してきたのだ。
 そう、これで地面に激突すれば元に戻るはずだった。最初に悟空がしたように。
 ――ショックを与えるべき、悟飯を元に戻すために。
 しかし、ピッコロは落ちて行く悟飯をそのまま見過ごすことができなかった。
「ぴ、ピッコロさん……」
 地面すれすれで悟飯を抱きとめる。
 悟空は加減なく気を放ったらしい。強力な気を受け、悟飯の意識は失われようとしていた。
「すまん」
 傷つける意図はなかった。
 だが、自分が言い出し方法で傷つけてしまった。その後悔から謝ってしまう。
「……謝らないでください」
 腕の中の悟飯の言葉にピッコロははっとして、彼を見つめる。悟飯の口元に微笑が見て取れた。しかし、彼の意識はそこに沈み、元に戻ったのか、確かめるすべはなかった。


「ピッコロさん!」
 今日も神殿に悟飯は来ていた。
 その笑みに邪悪なものは感じない。
 あれから目覚めた悟飯はすっかり元に戻っていた。しかし、記憶を失っていた時のことは覚えていない。
 覚えていてもしょうがない、と誰も彼に話すことはなかった。
「今日は、学校が休みなのか?」
「はい」
 瞑想するピッコロの前に座り、弟子は素直に頷く。
 『愛してます』
 そう囁いた弟子はそこにはいない。
 それに一抹の寂しさを感じる自分自身に、ピッコロは冷笑を向ける。
「ピッコロさん?」
 ふいに笑みを浮かべた師匠に、悟飯は不安げに首をかしげた。
「なんでもない」
 自分の思いがわからず、ピッコロはそう答えると目を閉じた。

 (完)



posted by ありま at 14:14| Comment(0) | 魔師弟 その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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