2014年03月11日

魔師弟話「神様の怒り」

「神様の怒り」

「悟飯さん!!」
 神殿に響くデンデの大声。 
 ミスターポポはまれに聞く神様の怒鳴り声に少し慌てた様子で出てきた。何にも動じない彼だが、額に汗をかき、目もいつもより大きく見開かれてる。
「神様。何。あった?」 
「もう、堪忍袋の緒が切れました」
 『堪忍袋の緒が切れた』、勉強家のデンデ、そんな言葉の言い回しもすでに修得していた。
「僕は悟飯さんに忠告します」
 先代同様ナメック星人の神様、普段ならその怖い顔も笑顔を浮かべているため、怖い印象はない。しかし今日のように怒っているとかなり凄みが効き、神様というより魔王という感じであった。
 デンデは目を閉じて精神を集中する。そして悟飯に呼びかけた。


『悟飯さん!』
 頭が割れそう程の大声が脳に響き渡る。
「デンデ?!」
 悟飯は眩暈を覚えながら、ぐわん、ぐわんと鐘が鳴っている頭を押さえ、返事をした。
 昼食を食べ終わり、対戦相手を決める抽選をするために悟空達と会場に向かっていた。すると妙な二人組に遭遇。二人の正体がわからぬまま、戸惑う面々だったが、「トーナメントのくじ引きがはじまっちゃうぞ」というクリリンの言葉で、再び会場へ歩き始めたのだ。
 そんな矢先、脳裏に友人の声がした。彼らしくない大声で、悟飯は戸惑う。しかし、デンデとこのまま会話すると、隣にいるビーデルにまたしても妙な疑いを持たれてしまう。
「ビーデルさん。僕、ちょっとトイレ行ってきますから、先行っててください」
 早口でまくしたてると、返事も聞かぬまま、悟飯は会場とは逆の方向に走り出す。
「悟飯くん?!」
 ビーデルが追いかけようとしたが、悟飯の姿は完全に消えていた。空に飛び上がって目を凝らすが探すことはできなかった。
「悟飯はトイレにいったのだろう。直ぐに追いかけて来るはずだ」
 すたっと地面に降り立ったところで、悟飯曰く「おかしな人」が話しかけてくる。ビーデルは訝しげに彼を見たが、その通りだったので何も答えず悟空達の後を追った。

「デンデ?どうしたの?何かあったの?」
ビーデルが歩き出すのを確認して、木陰に隠れていた悟飯は姿を現し、何故か怒っている友人に話しかける。
「どうもこうも。悟飯さん、ピッコロさんをおかしな人扱いするなんて酷過ぎます!」
「み、見てたの?」
 神様である友人はピッコロ同様、遠見の術を使うことができる。が、まさかあの場面を見られているとは思わず、悟飯は素っ頓狂な声を出す。そして同時にデンデが知っているということはピッコロにも知られている可能性に思い当たり青ざめた。
「ね、ピッコロさんにも聞こえていたかな」
 小さな声でビーデルには言った。しかもピッコロは後ろを向いていた。悟飯は聞こえるはずがないと思ってあんな事を言ってしまったのだ。ビーデルは普通の人間、しかもあのミスターサタンの娘だ。悟飯達の本当の姿を知られると都合が悪いと咄嗟の嘘だった。
「当然、聞こえていたはずです」
 珍しく憤っている友人の反応は冷たかった。
(どうしよう)
 悟飯はその場にしゃがみ込む。あんな馬鹿みたいな嘘を言ってしまったことを後悔する。
(ピッコロさんに嫌われた。今度こそ見捨てられるかもしれない)
 悟飯の思考がどんどん暗くなっていくのがわかり、怒っていたはずのデンデは逆に心配になってくる。
 デンデの心にも後悔という感情がもたげてきた。
 沈黙が訪れる。悟飯は俯き、デンデも遥かなたの上空で、同じ様にふさぎ込んでいた。

『お前たち。何を下らんことで悩んでるんだ!』
 不意に二人の心に響く声。それは悟飯の大切な人で、デンデの尊敬する同胞だった。

『悟飯、抽選会場まであと少しだぞ。猛スピードで戻って来い。デンデ、下らんことを心配をする暇があるなら、あの二人の正体について考えろ!』

 有無を言わせぬ言葉に、悟飯は気を高め駆け出す。デンデも悟飯から視線をはずし、会場に目を向けた。
 ピッコロが指した二人を見つけ、様子を伺う。地球人ではないのはデンデにもすぐわかった。が、異星人とも違う気がする。妙な気配だった。凝視できないくらいの圧迫感がデンデを襲い、視線をそらす。すると会場のすぐ外に、ピッコロたちの姿も見えてきた。

 悟飯はすでにピッコロたちに追いつき、和やかに話をしていた。
『ピッコロさん、ごめんなさい』
 直接会話はしてはいない。が思念で、悟飯がそう謝っているのがわかり、デンデは安堵する。同胞にも悟飯の侘びは伝わっているようだった。

「よかった。本当に」
 これでもう二人は大丈夫だろう。
 デンデはそう思い、天下一武道会の会場から視線を神殿に戻す。
 珍しく怒ってしまった神様は友人と同胞が和解したのを見届け、安堵していた。





posted by ありま at 10:42| Comment(0) | 魔師弟セル編直後ーブウ編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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