2014年02月17日

不可解な感情 1 of 2

「ピッコロ、様子、おかしい」
 元地球の神、元大魔王が神殿の一室に籠り始めて3日が経とうとしていた。ナメック星人唯一の栄養源である水は適度に取っているようだが、それ以外はずっと部屋に篭っている。
 彼の愛弟子が最後にこの神殿を訪れたのは、8日前だ。

「明日から学校行くんです。凄い楽しみです。学校帰りに寄りますから」
 悟飯はそう言い、踊るようなステップを踏んだ後、神殿を後にした。
 あれから、8日間音沙汰がない。ピッコロがその気になれば下界の様子を探るのは簡単だ。しかしそれをすることなく部屋に籠っている。
「僕が悪かったのでしょうか」
「ポポ、分からない」
 原因が不明な今、デンデは溜息をつくしかなかった。

  § § §

 籠り始めるの3日前、現地球の神様は元大魔王、元地球の神にあることを知らせた。
「ピッコロさん。悟飯さん、正義の味方になったみたいですよ」
 それまで定期的に悟飯の様子を神殿から見ていたピッコロだが、5日前ーー弟子が学校に通い始めてから、遠見の術を使うのをやめていた。疑問に思いながらも 、デンデは良かれと思い悟飯の様子を見て伝えることにしたのだ。
「グレートサイヤマンと言うそうです。サタンシティには多くの悪党がいるようで、毎日忙しそうです」
 優しい神様――デンデはそう言って微笑む。
 だから神殿に来られないのですよ――言葉には出さなかったが、同胞である彼には伝わっていたはずだ。しかし、ピッコロは表情を変えることもなく、頷くこともなかった。
「あ、そうそう。悟飯さんのクラスにあのミスターサタンの娘さんがいます。ビーデルさんと言って、お父さんのよりは強いようです。悟飯さんと競うように悪党退治をしています。一緒にいることも多いみたいで、悟飯さんは楽しそうですよ」
 ぴくっと、やっとピッコロに反応が現れる。それはいつもより険しい顔で、何やら不機嫌そうだ。
 何か悪いことを言ったかなと考えるが、デンデに思い当たる節はなかった。
「……調べ物がある」
 静かに、しかし誰にも口出しできないほどの気迫で、そう言うと彼は建物に入って行った。

 そう、それ以来、ピッコロは部屋に籠りっぱなしだ。
 「悟飯さん、なぜかわかりますか?」
 やろうと思えば心に直接問いかけることができる。しかし敢えてそうせずにデンデは独り言をつぶやいた。

 § § §

「……なんだ、この感情は」
 3日前、デンデから悟飯の話を聞いてからピッコロに不可解な感情が生まれていた。怒り、悲しみが混じりあったもので、言葉にはできない感情だった。
 悟飯が学校に通うことになり、ピッコロは彼の生活を邪魔することになると遠見の術を使うのをやめた。以前は3日と開けず悟飯の様子を探り、元気なのかと確認し、何かあれば彼の心に話しかけていた。
 学校に行く。
 彼は嬉しそうに語っていた。学校という場所はほぼ同年齢の者が集まる場所だ。邪魔はできない。そう思いピッコロはぐっと我慢していた。
 しかし、悟飯の様子は気になる。だからデンデから彼の近況を聞けたことは嬉しかった。
 だが、ビーデルという女性と楽しげにしていると聞き、感情が揺れた。
 ねっとりとした何かが、胸の中でうごめいているような感じがした。

 デンデにその気持ちを悟られたくないと、ピッコロは部屋に籠ることにしたのだ。また瞑想すれば、この不可解な感情を消しさることができる、そう考えていた。

 時間が刻々と過ぎて行くのをピッコロは知っていた。デンデからも気遣うような波動が伝わってきた。だが、部屋を出ることはできなかった。
 不可解な感情はまだ心の中に巣食い、ピッコロの感情を乱していた。
 瞑想してもそれが消えることはなく、彼を苛立たせていた。

「……悟飯」
 口にする愛弟子の名前。
 共に修行した日々は遠い昔のようだった。
 ピッコロは目を閉じて、その頃を思い出す。
 悟飯に修行をつけることになり、彼にとって最初、あの幼い存在は煩わしいものでしかなかった。しかし、共に過ごすにつれて気持ちに変化が訪れる。
 そしてピッコロは悟飯を庇い、命を落とした。
 その後、弱虫だった悟飯が師匠である彼を生き返らせるために、ナメック星にドラゴンボールを探しにいくことを知り、ピッコロの胸は熱くなった。
 悟飯と出会い、知りえた感情は多かった。それはネイル、神との同化を重ね、更に深まった。感情の意味を知ることとなり、悟飯への思いは強まったのだ。

 しかし、今抱える感情について、ピッコロは自分自身に説明ができなかった。


posted by ありま at 16:13| Comment(0) | 魔師弟セル編直後ーブウ編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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