2011年04月20日

ムカシノオトコ1

部屋の中でチャキチャキと髪を切る音が響く。
「髪の毛は私に似てよかったわねぇ。さらさらだわ」
ブルマはそう言いながら鏡越しにトランクスの青い目を見つめた。トランクスはブルマの大きな瞳に見つめられ、少し照れたように赤くなって俯く。
「トランクス、ちょっと下向かないで」
「す、すみません」
 トランクスはそう言うと慌てて顔を上げた。
「トランクス。私はお母さんなんだから。敬語なんてつかわなくてもいいのに」
 ブルマは苦笑しながらトランクスの前髪をざくっと切る。するとトランクスの切れ長の目あらわになってブルマはどきりとするのがわかった。
 色はブルマに似て青い瞳だが、目つきは父親のべジータのものであった。
「母さん?」
「あ、ごめん、ごめん。ぼーとしてたわ。髪型は前と同じにするわね」
 ブルマはそう言うとハサミを持ち直し再び、髪を切り始めた。


 ヤムチャがキッチンから皆のいるリビングルームへ戻るために廊下を歩いていると、嫌な男の影が見えた。近づくと
やはりそれはヤムチャの嫌いな男で、ダークブルーのアンダーにプロテクターを装備して壁に寄りかかっていた。その鋭い目を閉じられていたが、眉間には皺が寄り、体全身から不機嫌そうなオーラーが漂っていた。
 べジータのすぐ側にはスライドドアがあり、その中ではブルマがトランクスの髪を切っているはずだった。
(待ってるのか…?)
 ヤムチャは苛立ちながらも素直にトランクスの散髪が終わるのを待っているべジータを、不思議な気持ちで見つめた。
(以前の奴ならさっさと一人で神殿に行ったはずだ。やはり父親として何かしら感じているのか?)
「なんだ?」
 ヤムチャの視線に気付いてべジータが目を開いた。眼光はいつもながら鋭く、待たされていることでさらに鋭さが増していた。
(そんなにイライラするなら先に行けばいいのに…)
 ヤムチャは内心で苦笑しながらも、別の言葉を口から出した。
「もう一度修行したら、勝算はあるのか?」
 べジータはヤムチャの問いに馬鹿にしたような笑みを浮かべ、鼻を鳴らす。
「ふん、当たり前だ。俺を誰だと思っている。俺は戦闘民族サイヤ人の王子、べジータ様だ。お前らクズらと一緒にするな」
「クズ…。何度もそう言いやがって。そういうお前も完全体の前ではクズ同様だったらしいじゃないか」
「なんだと。言わせておけば!」
 べジータは額に血管を浮かせて拳を握りしめる。少し力を出すだけでヤムチャなど数秒で殺すことが出来た。
「父さん!」
 スライドドアを開けて、焦った様子のトランクスが出てきた。少し高まったべジータの気配に嫌な予感を覚え、出てきたようだった。
「ふん。命拾いしたな」
 べジータは腕を組み、鼻を鳴らすと、ヤムチャに再び馬鹿にしたような笑みを向けた。
「くそっ!」
「ヤムチャさん!父さん!」
 馬鹿にされ怒ったヤムチャがべジータに殴りかかろうと拳を上げた。トランクスはそれを慌てて止める。
「なあに?なに騒いでるの?」
 騒ぎを聞きつけ、部屋からブルマが顔を出した。トランクスの切った髪を掃除していたらしい。その手には掃除機が握られていた。
「トランクス。行くぞ」
 べジータは部屋から顔を出したブルマを一瞥すると、くるり背を向け、エレベータに向かって歩き始めた。
「え、あ?父さん?!」
 トランクスはヤムチャを抑えていた手を離すと、慌ててべジータの後を追った。
「ちょっと。べジータ!待ちなさいよ。まだろくに話もしてないでしょ?!」
 ブルマはべジータの背中に向かってそう叫んだが、その声にべジータが振り返ることはなかった。代わりにトランクスが引きつった笑みをこちらに向けて手を振った。
 ブルマはため息をつくと、トランクスに手を振りかえす。
「まったく、せっかちなんだから。もう少し話をする時間をくれてもいいのに。ねぇ。そう思わない?」
「ん、ああ」
 ヤムチャはそう自分に向かって口を尖らしたブルマに、曖昧な笑顔を向けた。




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posted by ありま at 13:39| DB 2次小説 セルゲーム前 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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