2010年11月18日

きずな2

 冷やりとする荒野でベジータはただ空を見ていた。
 空には美しい星が輝いている。
(宇宙で見る星とはやはり違う輝きだな)
 ベジータがそんなことを考えているとふとわずかな気を感じた。自分を煩わせるあの女の気配……。ごくわずかな、誰も気づかない気だがベジータにはその気の正体が誰か分かっていた。
(ブルマめ。何の用だ)
 ベジータが夜空を睨みつけていると、まもなくジェットフライヤーの音が聞こえた。その音に反応して丘の下で仮眠をとっていたトランクスが目を覚ます。

「ごめん。起こしちゃった?」
 ジェットフライヤーを着陸させ、スカウターを装着したままのブルマが降りてきた。
「母さん……」
 トランクスがすこしぼんやりした様子でブルマを見つめる。ブルマはそんなトランクスに微笑んだ。
「元気そうね。よかったわ。これ食料と水ね。たっぷり詰め込んできたら十分足りると思うわ」
 ブルマはそう言いながらカプセルの入っている小さなケースを渡した。
「あ、ありがとうございます」
「そんな敬語なんかつかわなくてもいいよ。トランクス。お母さんなんだから。それとも若いお母さんに照れてるのかしら」
 ブルマがそう言って艶美な笑みを浮かべるとトランクスは顔を赤くしてうつむいた。
(女性に免疫がないのかしら?まあ、この子の未来じゃそんな悠長なこと考えてる暇ないのよね。きっと)
「ブルマ、用はそれだけか。用が済んだらさっさと帰れ」
 腕を組み、不機嫌そうなべジータが丘の上から見下ろしてそう言った。ブルマはそんなべジータの様子を気にする様子もなく口を開いた。
「べジータ。あんた、この子の修行に付き合ってあげてるの?セルって化け物は強いんでしょ。ちゃんと修行してあげなきゃ大変じゃないの」
「貴様には関係ない。ガキは邪魔だ」
 べジータはブルマの言葉に舌打ちした後、そう返した。ブルマはため息をつくとべジータに向かって歩き出す。
「なんだ?」
 自分に向かって歩いてくるブルマにべジータは眉をひそめた。
「トランクス。悪いけどジェットフライヤーのエンジン見てもらってもいい?」
 ふいにブルマはトランクスに顔だけ向けてそう言った。
「いいですよ。エンジンですね」
 トランクスはブルマの言葉にそう答えるとジェットフライヤーに後部座席に回った。
「工具と携帯ランプがそこにあるはずよ」
 ブルマはべジータに近づきながらそう言葉を続けた。視線はべジータを捉えてる。ブルマの表情にいたずらな笑みが浮かんでるのをべジータは嫌な予感を感じながら見ていた。
「エンジンは機体の下でしたよね?」
「そう、そう。下のハッチを開けて見てみて」
 トランクスがランプを点けてジェットフライヤーの下に潜り込むのを確認して、ブルマはべジータの胸に飛び込んだ。
「なっ!」
 怒鳴りつけようと口を開くが、その口をブルマが塞いだ。ブルマの甘い唇の感触がべジータに伝わる。
「貴様という女は」
 べジータは忌々しげにそうつぶやきながらブルマの唇から離れた。
 ブルマの心配げな視線がべジータを捉える。べジータはため息をつくと今度は自分からゆっくり口づけた。
視線をジェットフライヤーに向けトランクスがこちらを見てないのを確認する。
「俺を誰だと思ってるんだ。馬鹿な女だ」
 べジータはブルマの唇から離れ、その体を抱きしめながら、そう囁いた。
「わかってるわ。でも心配なのよ」
 ブルマはべジータの胸に自分の顔を深くうずめてつぶやく。べジータは息を小さく吐くとその髪を撫でた。そして何か言葉を言おうとしたがトランクスが機体の下から顔を出そうとしたのに気がつき、ブルマから離れた。
「母さん、どこも悪くないみたいですよ。」
 工具を手にトランクスは機体の下から体を起こした。
「そう?おかしいわね。エンジンの音がおかしかったみたいだけど」
「大丈夫ですよ。なんなら機体の他の部分も見ましょうか?」
 トランクスは工具を手にそう言った。
「いいわ。もう大丈夫だと思う。ありがとうね」
 ブルマの言葉に疑問を持ちながらもトランクスは工具と携帯ランプを後部座席に戻した。
「じゃあ、私は帰るわね。超サイヤ人を超えてもっと強くなるって信じてるから」
 ブルマはその青い瞳をベジータに向けてそう言った。ベジータは当然だと言わんばかりに鼻を鳴らす。
丘から降りて、ジェットフライヤーの近くまで歩いてくるとブルマはトランクスに微笑みを向けた。それは、未来のブルマがいつもトランクスに向けるものと同じだった。
「トランクス、頑張ってね」
 ブルマはそう言うとジェットフライヤーに乗り込み、エンジンを始動させた。
「じゃ、またね」
 そしてブルマは機体を発進させる。機体が上空にゆっくりと上がり、べジータは無言でそれを見つめた。トランクスは上空に上がったブルマに向かって手を振る。
(死なないで)
 ブルマは機内から二人の姿を見下ろしながら、西の都へ帰るために舵をそちらに向けた。
(本当は強くならなくてもいい。ただ生きてくれればいいの)
 ブルマは心の中だけでそう呟くと西の空へ顔を向けた。
 ベジータとトランクスが見つめる中、ジェットフライヤーは星が輝く空の彼方へと消えた。



posted by ありま at 15:06| DB 2次小説 人造人間編ーセル編A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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