2010年07月28日

「迷い18」カエルトコロ8.5 番外編(修正版) 完

 数十分後。
 ベジータはカプセルコーポレーションの上空にたどりついた。そして邸宅内に静かに降り立つ。あたりはすでに暗くなっており、最低限の人口灯のみがカプセルコーポレーション内を照らしていた。
 ベジータはゆっくりした足取りで、研究室や住居の入っている建物に向かって歩いた。ひさびさに邸宅内をゆっくり見たが何ひとつ変わっていなかった。
 ベジータは歩きながら、説明できない感情が自分の中に湧き上がるのを感じていた。
(やはり戻ってくるべきじゃなかったかもしれんな)
 ベジータは不可解な感情に支配されるのが煩わしくここから離れた。そして、この場所に二度と戻ってくる気はなかった。しかし宇宙でトレーニングしなければ孫悟空には勝てない、そう思い戻ってきたのだ。
 ベジータは拳を握りしめると歩みを速めた。
 目的の建物近くに来ると球体の物体が見えた。それはベジータが数カ月前に破壊したものより少し大きく見えた。
(やはり完成してたのか。あのクソガキの宇宙船よりまともだな。当り前か。ツフル人の宇宙船をモデルにしていたはずだ)
 建物の中に入ると誰もいないようで、音一つしなかった。しかしベジータは研究室に明かりがついているのを知っていた。そして研究室に誰がいるのかもわかっていた。
(あの女は今日もまた俺を待っているのか……)
 研究室のスライドドアを開ける。明るい光がベジータの目をくらませる。
 徐々に鮮明になる研究室の中でブルマの姿が確認できた。
 ブルマはエアバイクの近くにしゃがみこみ作業をしていた。その表情は真剣そのものだった。
(やはり痩せたようだな)
 しかしその眼の輝きなどは依然のままだった。
(相変わらず気の強そうな女だ)

「ブルマ」
 ベジータはブルマを呼んだ。しかし、ブルマは気がつかないようで視線はエアバイクに向けたままだった。
「ブルマ」
 舌打ちして再度ベジータが呼ぶと、驚いた顔のブルマが顔を上げた。
「ベ、ベジータ」
 ブルマの視線がベジータに注がれる。
(泣きそうな顔だ)
「宇宙船が完成したんだな」
 ベジータはブルマの視線から顔を横に背けて呟いた。ブルマはただ黙ってベジータの顔を見つめていた。その顔が喜びに満ちあふれているのが顔をみなくてもベジータにはわかった。
 ベジータは息を軽く吐くと口を開いた。
「腹が減った。食事を用意しろ。すぐにな」
 するとブルマは輝くような微笑みをベジータに向け、いつものセリフを言った。
「その前にシャワー浴びてよね」
(この女はいつもと同じことを言う)
 べジータは舌打ちをし、研究室つきのシャワー室へ入った。
(この家はいつも同じだ。いつも俺をいらいらさせる)
 冷たいシャワーの水がベジータの体に降りかかる。それはベジータが毎日浴びていた滝壺の水と同じ感触だった。
(だから俺はあの滝壺が気に入ったのか……)
 ブルマが服を用意する音がかすかに聞こえる。そして研究室を出る音がした。
(多分、キッチンという場所に行き食事を用意するんだろう)
 ベジータはそのようにブルマの行動がわかることに苛立ちを感じていた。しかし同時に不思議な柔らかな感情が心に宿るのも感じていた。







posted by ありま at 11:30| DB 2次小説 人造人間編前A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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