2014年02月20日

飯P話『たいせつなひと2』

「やっほう!」
 オレンジスターハイスクールに向かい、一直線に飛ぶ。スピードは普段の何倍も出していた。
 ピッコロと思う存分修行ができる、久々に教えを請うことができると思うと心が躍っていた。
 校舎が見え始め、行き過ぎないように慌てて止まり、屋上に降り立つ。ビーデルに見つかると何を言われるかわからない。変身を解くと回りを確認しながら、教務室に入った。
「休学ね。編入したばかりなのに」
「……すみません」
 訝しげな事務員に、悟飯は申し訳なさそうに謝る。しかし、休学届は受理され、晴れて1カ月間、自由になる。

 帰りもビーデルやクラスメートに見つかれないように気を付け、校舎を出る。街に入ると変身して一気に空に飛び上がった。

「ピッコロさん、待っててくださいー!」
 悟飯はそう叫びながら、神殿へ飛んだ。

 § § §

「……ピッコロさん、悟飯さん。来るようですね」
 神殿の縁で元神様、元大魔王の横に並んだ現地球の神様はそう声をかける。
「ああ」
 声が裏返る程喜んでいる弟子の様子を遠見の術で見られ、ピッコロは悟飯に来るなと言いたくなるくらい居た堪れない気分になる。
 しかし、そんなこと言ったら悟飯がどれくらい悲しむかわかっているので、ただ静観するしかなかった。が、さすがに小っ恥ずかしくなり、逃げるように神殿の奥へ姿を消した。


 悟飯が神殿に到着したのはそれから5分後だった。

「あ、デンデ!ミスターポポも、こんにちは。ピッコロさんは?」
 神殿についた熱血青年は挨拶もそこそこに、神様に問う。
「ピッコロさんは奥にいますよ」
 デンデは苦笑しながらも神殿の奥を指差す。
「ありがとう!」
 悟飯は手をぱたぱたと大きく振ると、駆けていった。
「悟飯、嬉しそう。ピッコロ、きっと嬉しい」
「……そうでしょうね」
 あれほどの好意を向けられながら、照れ隠しのため何時もより冷たい対応をしてしまうに違いない、不器用な先輩の姿を思い浮かべ、デンデの顔も綻ぶ。同時に悟飯もずっと神殿で暮らしてくれたらと願わずにはいられなかった。


「ピッコロさん!」
 神殿の奥の書庫で読書中の師匠を発見した弟子は、抱きつかんばかりの勢いでピッコロににじり寄る。
「修行のやり方教えてください!」
 サングラス越しの悟飯の表情はわからない。しかし、弟子の熱意は伝わった。その熱さに参りそうになる自分を律しピッコロは低く唸る。
「わかった。しかしその前にその服を動きやすいものに変える」

『ピッコロさんと同じ服がいい』とお決まりのことを言われ、濃い紫の道着に服装を変える。グレートサイヤマンの変身装置が壊れるとまずいからと元の服装に戻り、変身アイテムを外した上の服装の変化だった。
 7年前にも同様に弟子の服を変えていた。しかし大きさは全く異なる。こうして同じ服装をしていると、悟飯の成長が間近に見え、ピッコロは目を細めた。
 見上げる表情は同じだが、幼い顔から青年の顔に変化していた。父親の悟空に似ているようで、異なる顔。
「ピッコロさん?」
 長く見過ぎたせいか、悟飯の表情に不安がよぎっている。
 父親と違い、息子は人に気を使い、周りに影響される。そのため精神的に不安定になることも多い。
「……よし、始めるぞ。まずは瞑想からだ」
 ピッコロは弟子を安心させるように口の端をあげ、笑みを作る。笑顔と呼べないものであったが、悟飯はそれで安心して、不安げな表情を安堵に変える。そして神殿の白いタイルの上に座り、目を閉じた。
 その様子を確認し、ピッコロは悟飯の向かいに座り、同様に瞑想に入った。

 § § §

 穏やかな空間、時が止まったような感覚。
 悟飯はひさびさにそのような時間を味わっていた。気持ちは幼い時に戻る。
 その昔、世界を震え上がらせたピッコロ大魔王の分身で息子。
 父――孫悟空は敵であった実兄を抑え、そのピッコロに魔閃光を打たせ、兄と共に死んだ。あの時、父はこうなることを予測していたのではと、今の悟飯には思えた。
 ピッコロに修行させ、未来に備える。
 修行と、母親から引き離され、最初悟飯は彼を恐れていた。その声、その姿におびえていた。
 しかし荒野に独りで取り残され、飢えていた時にさりげなく置かれた食料。その後も
 彼のさり気ない優しさに触れ、幼い悟飯の気持ちは変わっていった。
 ナッパによるエネルギー波で殺される運命を救ったのはピッコロだった。すぐ側で息絶えた彼を見て悟飯の心に沸き起こったのは強い怒り。

 そして知った彼への気持ち。
 父や母に対する思いとは似て似つかぬ想いだった。

「悟飯、気が乱れているぞ」
 ふと声を掛けられ目を開けると、最初に視界に飛び込んできたのは、その大切な人だった。
「悟飯」
 目を閉じたまま、ピッコロは弟子に瞑想を続けるように促す。
「……すみません」
 再び目を閉じて、悟飯は気持ちを抑えようと試みる。
 溢れる彼への想い、それは時を経るごとに高まっているようだった。


「もういいだろう」
 どれくらいの時がたったのか、悟飯にはわからなかった。師匠からそう言われ、目を開ける。
「雑念が多いな。まったく。でも少しは落ち着いただろう。食事を取って休憩したら今度は体を動かすぞ」
 悟飯はまだ瞑想から完全に覚めていなかった。意識がぼんやりしたまま、ピッコロに目を向ける。
 弟子の定まらない視線を受けながら、先ほど深い瞑想に入るまでに感じた彼の波動を思い出す。自分に向けられる強い感情、父親に対する気持ちのようなものだとピッコロは思うことにし、悟飯の視線から逃げるように立ちあがった。


posted by ありま at 17:47| Comment(0) | 魔師弟セル編直後ーブウ編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

飯P話『たいせつなひと1』

「に、兄ちゃん。もう行くの?」
 目を擦りながら、父そっくりの悟天がやっと目を覚ます。
 まだ眠そうな様子に悟飯は一瞬連れていくか迷う。しかし本人はすっかり一緒に行くつもりらしい。身支度を整えるために洗面所に向かう。
 もう少し遅い時間にすればよかったかと思うが、気分が高揚して早く目覚めてしまった。悟天が修行の手助けになるかは分からない。しかし誘ってしまった以上、今更悟飯一人で行くとは言えなかった。

 箪笥を開け取り出すのは濃い紫色の道着。再び修行する日が来るかもしれないからと、尊敬する師匠に作ってもらったものだった。セルと戦った時と同じ色、形のそれを身につけると、悟飯は体の隅々まで力が漲る気がした。
 悟天のためには、父が着ていたものと同じ色の道着と濃い藍色の長袖のTシャツを箪笥から取り出す。
 
 歯磨き、洗顔を終えた悟天は、一人で着替えをしようとまずは長袖のシャツと格闘していた。時間は多少かかるが一人で着替えることが出来るようになっており、悟飯は弟の成長に目を細める。山吹色の道着を着て、仕上げに藍色の帯を締める。そして準備万端の二人は部屋を出た。

 しんと静まり返る家の中。
 
「お母さんを起こさないようにするんだぞ」
 人差し指を唇に当て、弟と一緒にそろりそろりと家を抜け出る。

「兄ちゃん、まだ真っ暗だね」
 東の空がほんのり明るいだけで、辺りはまだ薄暗い。しかし野鳥は既に目を覚まし、小鳥達に囀りながら餌を与えている。
 グレートサイヤマンになるまでは、筋斗雲を通学に使っており、この時間に目を覚ますことが多かった。
 早朝の空気は清涼感に満ちていて、全てを浄化するような冷たさを持っている。悟飯は大きく深呼吸した後、悟天と一緒に準備運動を始めた。
「とりあえず超サイヤ人になっておくかな」
 一通り体を解し、悟飯は拳を握り、気を高める。一瞬で髪が逆立ち、金色に染まる。そして瞳は青色に変わっていた。
 7年前、父に教えられ、苦労して超サイヤ人になることを覚えた。そして、それを通常の状態に保つまでに体を鍛えた。しかし、平和の日々、超サイヤ人になる必要はなく、学校に通い始めるまでほとんど変身していなかった。
「よっし、始めるか」
「おう!」
 兄に言われ、弟は威勢よく返事をして左拳をあげる。

『悟飯!』
 が、 弟を連れ走り出そうとした瞬間、怒鳴り声に近い師匠の声が脳内に響く。
「ピッコロさん!」
 声に含まれた憤怒に気が付きながらも、弟子は嬉しくなって師匠がいるはずの天空を見上げる。傍にいた悟天は不思議そうな顔で兄を見つめていた。
『急に超サイヤ人になる馬鹿がどこにいる。7年も鍛錬をしていないんだ。まずは通常の状態で体を慣らすことから始めろ!』
 ピッコロは、誰よりも弟子の状態を理解していた。悟飯もそれを知っているからこそしゅんと肩を落とすと、超サイヤ人から元の状態に戻る。
「ピッコロさん。僕、久々の修行で嬉しくなって考えませんでした。そうですよね」
『そうだ。徐々に体を慣らすんだ。明日くらいには超サイヤ人で訓練しても大丈夫なはずだ』
「わかりました」
 悟飯は師匠の言葉にうなだれたまま、返事をする。あれから7年も立ったのに、未熟な自分が恥ずかしかった。
『何かわからないことがあったら聞きに来い。やり方は教えてやることはできる』
 しかし、ピッコロのこの言葉で悟飯は元気を取り戻す。怒ってはいない。また教えてもらえると、心が躍る。
「本当ですか?」
『ああ』
 師匠は弟子の声に籠った喜びの声に気が付いていないのか、いつも通り淡々と答えた。
「じゃ、今日行きます。学校に休学届を出しに行くのでその帰りに。待ってください!」
『……わかった』
 興奮する弟子に反して、師匠は静かに答える。

「兄ちゃん?」
 悟天が、悟飯のズボンの端を引っ張って見上げた。眉を顰め、困惑した表情をしていた。兄が突然空に向かって話し始めたので、大丈夫なのかと弟なりに心配しているようだった。
 通常悟飯はピッコロに神殿から話しかけられた場合、弟がいないところで会話していた。それは、弟に「僕もしたい」と邪魔されるのがいやだったからだ。今日はその隙もなく、会話をしてしまい、悟天に見られてしまった。
 悟飯は弟に聞こえないほどの小さな声でピッコロに「じゃ、後から」と言い、悟天に向き直る。
「さ、行くぞ」
 弟に質問する間を与えず、悟飯は走り出した。
「兄ちゃん、待ってよ!」
 どんどん先を行く兄を必死に追いかける悟天は、余計なことを考えることなどができることはずもなく、兄への質問などをすっかり忘れていた。

 § § §

 1時間ほど外を走り回り、悟天が疲れ切ったところで、悟飯は自宅に戻った。家ではチチが朝食を準備しており、いただきますと食べ始める。
「お母さん。今日、僕、学校に休学届を出してからピッコロさんの所へ行ってきます」
 胃袋がかなり満杯になり、心が落ち着いた悟飯は箸をとめ、母に今日のことを伝える。母に言わないと心配するので、直に伝えることにしたのだ。
「ピッコロさんのところべか?」
「はい。修行のやり方をちょっと教わりに。長いこと修行してなかったから感覚がつかめなくて」
「……わかったべ。遅くなるんじゃねーぞ」
 チチがピッコロのところに通う悟飯を止めたことはなかった。悟空が亡くなり、彼が悟飯の父親代わりといっても過言はなかったからだ。
 ピッコロは、ラディッツを殺すため、彼を押さえた悟空ごと魔線光で命を奪った。その上、当時4歳だった悟飯を修行という名目で奪い去った。その時チチはピッコロを憎悪したが、その後悟飯を庇って死んだことなどを知り、憎悪の気持ちは消えていた。そして人造人間に対抗するためにパオズ山で一緒に修行することになり、3年間家族の一員となったピッコロへ好意すら芽生えるようになった。
 だから今ではむしろ、悟空よりも悟飯のことを理解しているピッコロに頼っている部分もあるくらいだ。
「ずるい。兄ちゃん!僕もピッコロさんの所に行きたい!」
 母と兄の話を聞いていた悟天が急に口を挟む。
 ピッコロとは何度も面識があった。母が不在のときなどはピッコロが自宅に訪れ兄を助ける場面に何度か遭遇している。
 悟天は大人のピッコロに優しくされる兄が、うらやましくしょうがなかった。
「だめだ。僕は学校にも行かないといけないんだから」
 しかし悟飯は珍しくはっきりそう言って、悟天の願いを断る。
「ずるい、ずるい。兄ちゃんだけずるいよ!」
 弟は頬をぷうと膨らませ、抗議した。
「ずるいんじゃない。また今度な」
 逃げるように悟天の頭をぽんぽんと撫で、悟飯は立ちあがる。
「じゃ、お母さん。行ってきます」
「ああ、気をつけるんだぞ」
 悟飯の、ピッコロを独り占めしたいという、子供っぽい気持ちを知っているチチは、苦笑しながら見送る。
「お母さん、兄ちゃんだけずるいよぉ」
 残された悟天は半泣き状態で、手の甲で目を擦っている。チチは悟天を抱きしめ、ハンカチで涙をぬぐう。
「しょうがないっべ。悟天泣くんじゃねーべ。そうだ。片付けすんだら、おらが遊んでやる」
 悟飯には厳しく勉強、勉強と言っていたチチだが、悟空そっくりの悟天には何かと甘くなっていた。勉強を強いることなく、育てており、死んだ夫のように強い格闘家になってほしいと思っていた。
posted by ありま at 17:46| Comment(0) | 魔師弟セル編直後ーブウ編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

こ、更新したい。

現在、せっせと飯P書いてます。
一応一つ書き終わったのですが、最後はいまいち。
だから、我慢してます。

明日まで我慢できないから、多分明日には更新します。

ベジブルから見事に飯Pに転げてしまった。
ベジブル、書けないんだよね。
本当に。

ありま氷炎
posted by ありま at 13:44| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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